「連休」
連休だからどこか行きましょうよ という思いと 連休だからゆっくりしましょうね という思いは相反している。が、どちらも消えはしなくてせめぎあっており頭の中は中々に複雑である。 「あ、僕は今日車の整備をするから」 とあっけなく車庫に向かったから、フランソワーズは朝からご機嫌斜めだった。 「まったくもう、なんなの」 博士でさえ、イワンを連れて出かけたのだ。 「連休中、ずっと単独行動するつもり…?」 そう口に出して言うと妙に現実感が増して、フランソワーズは更に不機嫌になった。 「もう。――出かけちゃおうかしら」 そう、ショッピングとか。 「フランソワーズ、出かけるの」 背後から声をかけられ飛び上がった。 「ジョー。どうしたの」 不機嫌なのだ。 「出かけるって今言ってたよね?ちょうどよかった」 そう言うと、ジョーはちょっと困ったように頭を掻いた。あさってのほうを向く。 「いや…昨夜、いつも行く店からメルマガが届いたって言ってただろ」 ほら、二人だけになれるし というジョーの言葉は、首筋に飛びついてきたフランソワーズによって遮られた。 「もう、ジョーのばか」
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帰ったのは夜10時を過ぎていた。 「ジョー、お風呂空いたわよ」 風呂上りの香りを漂わせながらフランソワーズがリビングにやって来た。 ――ああ…なんだか機嫌が悪いなあ。 寝転んでいるジョーを見下ろすフランソワーズはいつになく冷たい瞳である。もちろんジョーの印象であり、傍からみればいつもと変わりのないフランソワーズのはずであった。 「入らないの?」 そのままくるりと踵を返すと振り返らずにまっすぐ出て行った。 いやまったく。参ったなあ…。 そう、フランソワーズはお風呂の前にリビングに寄ってジョーに一緒に入らない?と声をかけたのだった。 ――博士がいないからって、こういうのはダメだよなぁ…。 ソファの上で胡坐をかいて考え込む。 が。 本当に数日間二人っきりとなってしまうと何故だか理性が勝ってしまうのである。 しかし。 しかし、なのである。
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