「僕達は別に」

 

 

「ジョーってああ見えて、けっこう甘えんぼなんじゃないか」

「えっ・・・」

私はジェットの言葉になんと答えたものか、一瞬だけ迷った。
そうして、えへんと胸を張って、

「そうよ。意外とジョーは甘えんぼよ。知らなかったでしょう」

と勝ち誇ったように言った。


「ふうん。やっぱりな」
「なんなの、急に」
「いやぁ・・・この前気付いたんだけどさ、アイツ、食後のコーヒーを飲むときソファに座らないだろ」
「そうね」
「最初は席が埋まっていたからだと思ってたんだけど、違うよな?席が空いていても座らないよな」
「ええ」

よく観察してるわね。

とは言わず、とりあえず話を聞く。


「アイツ、僕たちは別に・・・なあんて言うくせに、本当はお前さんに気があるだろ」
「・・・・・えっ?」
「変だと思ったんだよな。いつもお前の座っているソファの肘掛けに腰掛けているしさ。お前は気付いてたか?」
「え?・・・ええ」
「はん。その様子じゃ、アイツがいくらアプローチしたところで無理なようだな」


私は何と答えたものかわからず、曖昧に笑って誤魔化した。
みんなにはそう見えているのかと思うと吹き出しそうになったけれど。


「しっかし、フランソワーズに甘えるかねぇ。他に女はいるだろーに」
「あら、私に甘えたら変かしら?」
「変だろうよ。気が強くてはねっかえりで・・・あわわ」

私はジェットを思いきり睨みつけた。
両手を腰にあてて、下から見据えて。

「悪かったわね。でも残念ながら、ジョーの片思いじゃありませんから!」
「・・・へ?いやだって、お前ら・・・僕たちは別に、って」
「そう言ってるのはジョーだけでしょ。私は言ってません」
「まあ、確かにそう・・・だけど」


私は大きく息をつくと、両手を下げた。
そうして悩むジェットを残してリビングを出た。

階段を上る。

目指すはジョーの部屋。

ジェットにこんなこと言われたのよって報告して・・・甘えて抱き締めてもらうために。