「守るもの」

 

 

「ジョー!」

 

フランソワーズが凄い勢いでジョーにぶつかってきた。
そのまま彼の体に腕を回して抱き締める。


「え、・・・っと、フランソワーズ?」


けれどもフランソワーズは答えない。ジョーの肩に頬を擦りよせ彼の名を連呼するだけ。
ジョーは少し困ったように目を上げた。
周りには、彼と同じように少し困った様子のゼロゼロナンバーの仲間たち。


「・・・ま、仕方ないな」


ジェットが肩をすくめる。
ジョーも苦笑すると、フランソワーズに頬を寄せた。
抱き締め返す事は出来ない。

何故なら、――腕が。


「痛くない?」


フランソワーズが小さく問う。


「うん。大丈夫」
「嘘つかないで」
「本当に痛くないよ」
「嘘よ」
「本当だって」


なにしろ、神経も焼き切れているからな。
と、胸の中で言う。声には出さない。


「それより、ほら・・・みんなが見てる」
「いいの」
「いいの、って・・・」


およそいつものフランソワーズらしくない。
いつもなら、このくらいの怪我で動揺したりなどしない。
お疲れ様、すぐ手当てしましょうとメディカルルームへ誘うだけ。

――いつもなら。


「・・・フランソワーズ」


いつもと違う。


それは。


「・・・いなくならないで」
「ならないよ」
「イヤよ」
「うん。・・・大丈夫だから・・・楽しみにしているんだ、僕も」


ミッションに加わらず、待機しているフランソワーズ。
一ヶ月前から強制的に留守番組にされている。

どんなに心配しても足りないだろう。近くにいないのに、戦う姿は見えてしまうのだから。


「どっちに似てるかな」
「どっちでもいいわ。・・・元気なら」


フランソワーズが目尻を拭いながら顔を上げる。
それを待ち構えていたかのように、ジョーは唇を寄せた。


「・・・僕を信じて。君たちを置いて逝ったりなんてしないから」

 

守るものが増えたのだから。