「少女漫画みたいな」
彼が他のひとと手を繋いでいるのを見て初めて気付いた自分の気持ち。
――なんて、我ながら定番過ぎると思う。 でも、そういう意味で言うなら少女漫画こそ真理なのかもしれない。 自分のなかにある独占欲。
ジョーが救助した女性の手をとるのはよくあること。 こんなことで嫉妬していたら身がもたない。 ほら、女の子は泣いているわ。助かって安心して気が抜けたのね。みんなそう。 ――気持ちはわからないでもない。 助けに来てくれた王子様。道中、ずっと頼りにしていたたったひとりのひとだもの。 私がいる前でも。
なんなの。
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「えっ、なんだい?フランソワーズ」
なんでもないって感じじゃないんだけどな。
「……」
僕は自分の胸に手を当てて、直近三日間のことを考えた。 何がなんだかわからなかったけれど。 でも、僕に何か言いたいことがあるのであれば、きっと10分以内には話してくれるはず。
フランソワーズの肩が揺れて、顔が上がり僕を見た。
「うん?」
一瞬、心臓が止まりそうになる。 た、頼むよフランソワーズ。僕を殺す気かい? 握り締めた手にちからをいれると、フランソワーズはウフフと笑った。
こういう手の繋ぎ方をするのって、君と一緒の時だけなんだよ。
知ってた?
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ジョーにいつか言おうと思っていた。ずっと。 突然の親密さに私はすっかりのぼせてしまって、ジョーの手のひらから伝わる彼の体温しかわからなくなってしまった。 手を繋ぐとドキドキする、って。 でも嬉しい、って。 でも、もしも聞こえてしまうのなら。
『他の女の子と手を繋がないで』
だけどこれを言ったら、独占欲の強い女の子って思われないかしら。 それはイヤ。 そう思われるくらいなら、……ちょっとくらい、我慢する。 そう心が挫けかけたとき、まるでそれがわかったみたいにジョーの手にちからがこもった。
手を繋いだだけで全部通じるみたいに安心してしまう私って、やっぱり少女漫画みたいだけど。
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