「怪談?」

 

 

「あれ?お客様かい、フランソワーズ」

お茶が入ったわと呼ばれて階下に降りてきたジョーは、テーブルを見て明るく言った。
こんにちはと軽く会釈してフランソワーズを見る。

「紹介してくれるよね?」

「えっ……」

屈託なく言うジョーにフランソワーズは戸惑った。

「あの、ジョー」
「ほら、カップが足りないよ、フランソワーズ」
「えっ、足りないって」
「駄目だなあ。いいよ、僕が用意するから」

そして身軽にリビングを出ていって、あっというまに戻ってきた。
手にはカップがふたつ。

「はい、どうぞ」

ジョーがカップを置いたのは、誰もいない席だった。

「ジョー、あなた……」


何が見えてるの?

 

新たな事件の幕開けだった。

 

 


 

 

「本当に怖かったんだから!」


その晩、フランソワーズはおかんむりだった。

「ジョーにしか見えない何かがいるんじゃないかって思ったわ!」

しかし、真相はジョーがフランソワーズをからかっただけであった。

「いいじゃないか。夏なんだし」

ちょうどメンテナンスに来ていたピュンマが笑う。

「日本の夏の風物詩なんだろう?怪談って」

しかし、フランソワーズは両手を揉み絞り訴えた。

「そうよ!別の意味で怖かったわ!」
「なんだい、別の意味って」
「このひと、とうとうどうかしちゃったのかしら、って!!」

大笑いするピュンマ。

ジョーは、

「ひどいなあ。どうかしちゃったってどうなるんだよ」
「何か海で拾ってきたり、宇宙と交信したり、不思議体験満載だもの、あなたって」

ジョーはただ頭を掻くしかなかった。

「いや、だから、フランソワーズもそういう体験したいかなーって……」

「まぎらわしいのはいりません!」

 

 


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