「コタツの行方」
そろそろコタツを出そうかしらと考えたフランソワーズは、季節ものをしまってある部屋に来ていた。 フランソワーズは冬のコーナーにまっすぐ進み、さてコタツはどこだろうと思案した。 しかし。 それが、今年は・・・無い。 コタツを置いてあったであろうスペースはある。 フランソワーズは胸の前で腕を組み・・・首を少し右に傾けた。 「ジョーに訊いてみようかしら」 そう思ったのはジョーを頼りにしている証拠なのか、あるいは別の嫌な予感のためだったか。 ともかく地下に降りて、なにやら作業中のジョーをつかまえた。 「珍しいね、フランソワーズ。ここまで来るの」 僕に会いにきたのかい、はははまさかねと勝手にひとりコントをしているジョーに取り合わず、フランソワーズは真顔で尋ねた。 「コタツがないの。ジョー、知らない?」 ジョーはあらぬ方を見つめていた。 そこにあったのは、ジョーが作成中のものだった。 「フランソワーズ号がどうかしたの?」 フランソワーズはそこで思い出した。
フランソワーズは無言でじいっとジョーを見た。 「いやほら、ね?これだって早く完成させたいし」 フランソワーズは無言のまま。 「だからさ、そのぅ」 フランソワーズは大きく息をついた。 「まったくもう」 素直なのはジョーの長所なのだろうけれど、こうもあっさり謝られると知能犯のような気もしてくる。 「今年の冬は寒いのよ」 悪びれず言うのがジョーのいいところなのかもしれない。 「どうするの?寒いわよ、きっと」 べたべたくっついてくるジョーを引き剥がす。が、なかなか剥がれてくれなかった。 「暑苦しいでしょ」 とはいえ。 「そんなの、愛着があるからに決まっているだろ」 心の声が聞こえたかのように答えるジョー。 フランソワーズは抗うのをやめてからだのちからを抜いた。 「もうっ・・・ほんと、いやなジョー」
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