ちゅっと最後にジョーの頬にキスをするとフランソワーズは彼から下りようとした。
が、腰をジョーにしっかり掴まれて身動きできない。
「ん、ジョーったら。離して」
「うーん。そうしたいのは山々なんだけど…もうちょっとじっとしててくれないかなあ」
「嫌よ。疲れたもの」
眠いと訴える彼女にそれはわかるんだけどとジョーは言葉を濁した。
「その、余韻というかなんというか」
「余韻んん?じゅうぶん取ったじゃない、時間」
「うん、まあ、そうなんだけど」
「じゃあいいでしょう。もう疲れちゃった」
ジョーったら本当に何にもしないんだものと唇を尖らせ、フランソワーズは腰を浮かした。
が。
「……ジョー?」
険しい視線がジョーを見る。
「ちょっとやあよ?もう疲れたし」
「いやあ、それなんだけど」
「今さらそれはないと思うわ」
きっぱりと拒否の意を表すフランソワーズにさすがにジョーもむっとした。
「そんなこと言ったって、僕の一存ではどうもできないこともあるんだぞ」
「アナタの一存でどうとでもなるでしょ。自分で言い聞かせたらいかが?」
「できたらとっくにしてるさ」
「じゃあそうしてちょうだい。さあどうぞ」
「だから、できたらとっくにしてるって言ってるだろ」
「だめねえ」
「大体フランソワーズが悪いんだぞ。いつもより積極的だし、いつもより情熱的だし。どうして毎回そうしないんだ」
「アラ、だってそうしたら特別感がなくなるでしょう?3月9日の」
「そんなの僕は気にしないよ」
「私は気にするの。――ということで、抜いていいかしら」
「……駄目」
拗ねたように目を逸らすジョーにフランソワーズはまったくもうと息をついた。
確かに彼の言う通り、今のこの状態で彼を放置するのは非道というものだろう。
いつになく情熱的かつ積極的だったのもそうだし、それで彼もいつもよりも――というのは自然の成り行きではある。
「しょうがないわねえ、あと一回よ?その代わりジョーも動いてね?私もう疲れちゃったもの」
「――もちろん」
途端、フランソワーズと視線を絡ませたジョーが本当に嬉しそうだったので――
「む、フランソワーズっ、急にそれは反則…っ」
予告なく締め上げられジョーが呻く。
が、それはフランソワーズ自身も予想してなかったらしく、もどかしそうに腰を動かした。
「やっ…ジョー」
うるんだ瞳に苦鳴のような声。染まった頬――が可愛くて、俄然ジョーも猛った。
実は先刻からこんなことの繰り返しだったりする。
言葉で何を言っていても、互いに離れたくないのは事実だったからなかなか終わりはこないのだった。