「晴れたらいいね」
夜中は雨だったのに朝になったら止んでいた。
フランソワーズががっかりしたように肩を落とした。 「もうっ。つまんない」 シーツの奥から呪詛の声。 やれやれ。 別にいいじゃないか、晴れたって。洗濯物がよく乾くし。 「洗濯なんかしないもん」 今日の呪詛は長いな。 「ジョーのせいよ」 おっと。それはとばっちりだ。 「フランソワーズ」 シーツの上からフランソワーズの頭のあたりを撫でる。が、首を左右に振って僕の手から逃げる。 「だって。雨が降ったらお出かけしたかったのに」 はいはい。新しいレインシューズな。 「ジョーのばか」 だから、なんで僕のせい? 「ジョーが雨が嫌いって知ってるから降らないのよ。贔屓されてるんだわ」 何がだ。 「みんなジョーのほうが好きなのよ。天も味方しちゃうくらい」 …あのさあ、フランソワーズ。 「ずるいわ、ジョーばっかり」 あのなあ。 僕はため息をつくと、シーツの中を覗いた。フランソワーズの金色の頭だけが見える。 「フランソワーズ」 小さな声で呼び掛ける。 「……僕はフランソワーズのほうが好きだよ」 フランソワーズがこちらを見る。拗ねた顔も可愛い。 ――可愛すぎる。 反則だろう、それは。
シーツに潜っていたせいか、ほんのり上気した頬と軽く尖らせた唇。
返事を聞かずに食べていた。だって、今日はもう何もしないって言ってたし。 「え、ジョー、ちょっと」 ああ、晴れてよかった。今日もフランソワーズを独り占めできる。 「もうっ、ジョー」 雨乞いなんかしない。 ずっとずっと晴れて、こうして僕と一日過ごせばいい。 そんな日が続くといい。
晴れているのに濡れてるねと言ったらすごーく怒られたけど。
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