「雨中の…」

 

 

 

どうしてこういうことになっているんだろう……


僕はフランソワーズの口腔内を舌で探りながら考えていた。
もちろん、気持ち良くないかどうかと訊かれれば気持ち良いに決まっているし、抵抗があるかないかと問われれば無いと答えるだろう。

だがしかし。

雨中を選ばなくてもいいだろうという思いは残る。僕は雨が嫌いなんだ。
それに、フランソワーズ。せっかく綺麗な格好をしているのに雨で濡れるよ。いいのかい?

「平気よ。傘をさしてるもの」

キスの合間に可愛く言う。
その瞳が潤んでいて、僕は衝動に突き動かされる。

だけどさあ、フランソワーズ。傘をさしているのは僕なんだよ?これって物凄い無理難題じゃないかな。
片手しか使えないのに、雨を避けながら本懐を遂げろとは。

いや待て。

この場合、僕が望んだ事態ではないのだから、本懐を遂げるのはフランソワーズのほうだろう。
僕はいわば、彼女のいうがまま従うしかない下僕のような役割で…。


いつもはトレーニングに使う松の木にフランソワーズを押し付け、傘を傾け雨を避ける。
別に無理強いしているわけじゃない。フランソワーズにこの場所まで誘導されたのだ。
松林と海しかない場所。どうしてここがいいのか理解に苦しむ。
濡れるし潮風が重いし足場も悪い。室内の方が心地好いに決まっている。が、今さら場所を変えてという気には既にならなかった。
しかもフランソワーズはここがいいのだと譲らないし、七夕のお願いなどと言われたらそれを叶えてやるしかないじゃないか。

僕はフランソワーズの口腔を蹂躙しながら、彼女のブラウスの裾から手を侵入させた。
柔らかい膨らみは張りつめていて、下着の上からでも先端の硬さを感じられた。
しばしそのまま先端を撫でていたが、フランソワーズがじれったそうに唸ったので下着をずらし露にさせた。

「敏感だね、フランソワーズ」
「やっ…ばか」

知らない、と言うと僕の肩に顔を埋めた。
僕はしばらく彼女の胸の先を弄ぶ。時折、びくんと反応するのが凄く可愛くてやめられない。が、やっぱり不便だよフランソワーズ。片手しか使えないなんて。

「フランソワーズ…っ、もう無理だ」
「ううん。待って…」

傘を手放そうとする僕を制し、フランソワーズは僕の胸を少し押して身体と身体に隙間を作ると、自分でブラウスのボタンを外した。
そして前を開くと改めて僕を見た。

「…ジョー」

目の前には下着を僕にずらされ露になった白い胸がある。
これを見るだけでいいなんていう男はバカだ。
僕は差し出されたそれを口に含んだ。フランソワーズが痛いと僕の頭を掴んだけれど、そんなのもちろん嘘だと知っている。僕が痛くするわけないのだ。彼女のことならなんでも知っている。痛いは気持ちいいの同義なのだ。

「は…っ、フランソワーズ」

しかし、不便だ。いろいろが思うようにいかない。
別に傘なんてどうでもよくないか?このままじゃどうにもならない。僕も辛いがフランソワーズだってそうだろう。多少の雨に濡れるのは仕方ない。外にいるんだから。

「だめ、風邪ひくわ。凄く降ってるのよ、雨…」

フランソワーズはうわごとのように言うと僕の頭から手を離し、僕の頬にキスをした。

「大丈夫。私に任せて」
「う?うん…」

まあ、どうせ下僕だ。
傘を持ち、雨に濡れないようにしながら事を進めろなんて無理難題を受けた時から、主導権は彼女にある。僕はフランソワーズにされるがままなのだ。

フランソワーズは僕のジーンズに手をかけるとボタンを外しジッパーを下げた。
躊躇うことなく中身を探る。

え、何をどうするつもり?

僕は二人が傘の陰に隠れるように傘の向きを変え、空いたほうの手でフランソワーズの片足を持ち上げた。僕の足に掛けるとそのまま腰を押し付けるようにしてスカートの裾を捲る。
下着の上から互いに密着しているけれど…

「…フランソワーズ?」
「ん…大丈夫よ、ジョー」

そうだろうか?

いや、自己申告はあてにならない。大体、もし無理だったら痛いのはフランソワーズだ。どちらにしろ僕は止まらないのだから。

「いや、…待って」
「イヤ」
「すぐだから、確かめさせて」
「んもう。信用ないのね私」
「そうじゃないよ」

大事なんだ。傷つけたくない。

僕は下着の横から指を差し入れた。

どうなってる?

「んっ…」

フランソワーズがびくんと揺れる。
温かい。そして潤んでいる。
溢れるようなそれは奥から湧いてくるようで、僕はそれを確かめずにはいられない。
奥に奥に指を進め、源泉はどこなのか探ってゆく。
フランソワーズが僕にしがみつき声を洩らす。甘えるみたいに腰を押し付け揺らしてくる。

「だめ、ジョー…」

しかし。
これだけでこうも反応しているなんて。いったい、今日のフランソワーズはどうなっている?

「意地悪っ…」

泣きそうな声で言うと僕の手を強引に引き剥がし、僕の熱さを誘導する。
下着に手を入れ優しくさすると、おもむろに自分自身の中に導いた。

「はっ、あ、ジョー」

そのまま僕を呑み込んでゆく。十分に潤っているからすんなり入って行く…が、少しきつい。
もちろん僕のせいだ。フランソワーズは悪くない。僕がいつもより怒張がきついんだ。
だってさ、フランソワーズ。この状況でいつものままなわけないだろう?
僕は、慣れたはずの道を押し入ってゆく新鮮さに夢中になった。フランソワーズは温かく僕を受け入れてはいるが、気を抜くと押し戻されそうになる。その弾力と温かい流れに逆らい奥を目指す。

「…っは、入っ…た」

きつい。

僕はフランソワーズの首筋に唇をつけ息をついた。

「ん、ジョー」

フランソワーズが喘ぐ。
きついのが苦しいのか、体勢が辛いのかいまひとつわからない。が、彼女のなかの熱は増してゆく。

「動くよ」

小さく宣言するとフランソワーズもまた小さく頷いた。
僕の足に掛けていた彼女の足を下から持ち上げるようにして腰を押し付け、下から突き上げる。
フランソワーズが声を上げる。が、構わず突き上げ彼女の奥を突いてゆく。

「あ、やっ、…だめ、」

フランソワーズが身体を震わせ僕の肩を強く掴む。が、僕はちからを緩めはしない。
奥の奥で繋がっている。もっと、もっと、ひとつになりたい。

「ダメっ…ジョー」

フランソワーズはびくんと身体を揺らすと甘い悲鳴を上げた。いつもは聞かない甘くて切なくて可愛い声だ。

「フランソワーズ…っ」

たまらず僕はフランソワーズを両手で抱き締めた。
そのまま砂浜に倒れ込む。雨粒が背中を叩いてゆく。が、知るもんか。
僕はフランソワーズを抱き締め、思う存分揺らし続けた。
僕の熱と彼女の熱が絡み合い、いつもと違う場所へ連れていくようだった。
フランソワーズはいつもより素直に反応し僕のひとつひとつに可愛い声をあげる。そんな声が出せるなんて知らなかったよフランソワーズ。まるで秘密兵器みたいだ。
甘く響くその声をずっと聞いていたくて、僕はいつもより執拗だった。…が、全てに終わりがあるように、これだって永遠に続くわけじゃない。
違う角度で深く突いた途端、フランソワーズが切なく啼いて僕を締め付けた。

僕の熱は彼女とひとつになって、溶けた。

 

 

で、結局。

「あんもう、砂だらけじゃない」

二人ともずぶ濡れで砂だらけだった。
あんまり楽しくて、砂浜を抱き合ったまま転げあって愛し合ったせいだろう。下僕失格だ。
ちなみに傘は風に飛ばされどこかにいってしまった。

「まあ、家は近いんだし」

誰に見られるわけでもないと言ったら、博士に見られたらどうするのと訊かれた。
うーん。そうだなあ。

「転んだっていうのはどう?」

まあ、信じてもらえるかどうかは五分五分だろう。
でも、我慢しないで声を出したかったからという大胆かつ可愛い七夕の願いには思い至らないだろう。
それを知っているのは僕だけだ。
そして、それを叶えることができるのも僕だけなのだ。
それがなんだか誇らしくて嬉しかったから、僕はフランソワーズを抱き締めた。

「ん、ヤダ、ジョーったら。まだ…足りないの?」

誘うような瞳。

ああ、そうだな。

たぶん

「全然足りないよ」