「いやぁ、あの時は何が何やらさっぱりわからなくってさ」
あの時というのは、サイボーグとして目覚めた時のことである。
「いきなり撃たれるわ襲われるわで、自分が何者でいま何をしているのか考える余裕もなかったし。だから、ぼーっと攻撃をかわしていたら話しかけられたわけだ。それがイワンだった」
更に言うには、何も考えずぼーっとしていたから、こっちに来いといわれた時もぼーっとついていっただけなのだという。
「ま。呆れた」
つんと顔を背けたフランソワーズにジョーは苦笑した。
「あ、いや、でもさ。やっぱり綺麗な子に誘われるのとそうじゃないのとは違うし」
「……綺麗な子ならついていったってわけ」
横目で疑わしそうにこちらを窺うフランソワーズ。
ジョーは参ったなと頭を掻いた。
「うーん。たぶん、そうじゃないと思う」
「そうじゃない、って?」
「う、まあ、いいじゃないか、そんなことは些細なことだ」
003と名乗った女の子に一目惚れしたからついていった…とは、気恥ずかしくて言えない。
戦いの最中にそんなことを考えていたの不謹慎だわと言われそうだし。
だからジョーは曖昧に微笑んだ。
……うん。
フランソワーズじゃなかったら、きっと今頃は……
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