「冷たいシーツ?」
「シーツが冷たくて眠れないの。一緒に寝てもいい?」
いいも何も。 ここのところ、ずっと一緒に寝てたじゃないか。 という台詞を全部飲み込んで、僕はどうぞと彼女を部屋に入れた。 まったく。 同じ邸内といっても古い建物だから、廊下に暖房は入っていない。 ほら、すっかり冷えてる。 と、彼女の肩を抱こうと伸ばした手をフランソワーズはするりとかわし、さっさと僕のベッドに潜り込み丸くなった。 ――シーツが冷たいとかって口実じゃなかったのか? 僕は首を傾げながらドアを閉め、あくびをひとつするとフランソワーズの隣に滑り込んだ。 僕はフランソワーズの背中から腕を回し抱き枕のように抱き締めた。
……ん?
温かい…?
あれ?
僕は目を開けてフランソワーズの体を触った。 冷えてない。 温かい。 さっき、「シーツが冷たくて眠れないの」って言ってたよな? いったい、どういうことだ。 フランソワーズのうなじを舐めながら考えた。 シーツが冷たくて眠れないのに、体は温かい理由を400字以内にまとめよ。
あ、やば。 無意識に吸っていた。 と。 笑い声? フランソワーズの肩が揺れている。 「もう、ジョーったらくすぐったいわ」 全然本気じゃないし。 「それより、シーツが冷たくて眠れないとか嘘だろ。体は冷えてないし」 フランソワーズは肩越しにちらちと僕を見て、体の向きを変えた。 「ええ。嘘よ」 僕の頬を指先でするりと撫でる。 「ジョーと一緒に寝たかったんだもん」 頬を膨らませ拗ねたように言う。気まずいとかあるわけないだろう。何年の付き合いだよ。 「素直じゃないなあ」 今度は熱くて眠れないのって言わせてやる。 フランソワーズの唇は既にとっても熱かったけれど。
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