一緒にいても、時々ふっと不安になることがある。

 

あなたはいつか、いなくなるかもしれない。

 

私が不安に包まれると、あなたはいつも「もし離れたとしても必ずまた会えるよ」と言って優しく笑った。

でも。
そんな安易な物言いにはだまされなかった。
また会えるなんて、どうしてわかるの?
もしかしたら、ずっとずっと――二度と会えないかもしれないのに。
また会える、なんて――そんな不確かな未来を約束されても、私は納得しなかった。
どうしても不安は消えなかった。

 

「――大丈夫。絶対、また会えるから」

私を抱き締めてあなたは言う。

 

もし、私たちが離れ離れになることがあっても。

そんなことがあっても。

そんな目に遭っても。

それでも。

 

遠い遠い未来に、私たちは必ず再び出会うことができる。

 

――本当に?

そんな未来がやって来ると安易に信じてしまってもいいの?

信じられるものなら、信じたい。
そして、泣いたりなんてせず、笑って、あなたに再び会える日を楽しみに生きていきたい。

・・・でも。

 

もし。

「もし、出会った時にお互いがわからなかったらどうするの?」

 

あなたが私を忘れる。

私があなたを忘れてしまう。

そんなこと、考えたくもなかったけれど。

 

「フランソワーズは心配性だなぁ。――大丈夫だよ」

くすくす笑って、あなたは私を抱き締めた腕に力をこめる。そうして、私の髪に顔を埋めて

「・・・会えば、必ず思い出すよ」

優しく、優しく、そう言った。

「だから大丈夫。なんにも怖くないよ」

耳元で、何度も何度も繰り返す。

「それに、もし――僕には絶対に在り得ないことだけど――もし、僕が君のことを忘れてしまっていたとしても。
それでも――」

出会ったら、必ずまた好きになる。

ほんとだよ?

 

耳に残る、あなたの声。

「大丈夫。絶対に、また会えるから」

 

***

 

また会える。

必ず、出会える。

もし、お互いに離れてしまう日がきても怖くない。

必ずまた会えるのだから。

また出会えるのだから。

その時、お互いがお互いをわからなくても。忘れてしまっているようなことがあっても。

それでも

必ずまた好きになる。

だから、大丈夫。

だから、平気。

寂しくない。

必ず出会える未来を信じていられる。

 

 

***

 

「ジョー。くすぐったい」

ふざけて首筋に唇を寄せてくるあなたを押し戻す。

「もうっ・・・ジョーってば」

あなたの腕の中で私は幸せだった。
普段、甘い言葉なんて言わないひとなのに、なぜかその日に限ってあなたは何度も何度も囁いた。
キスとキスの合間に。

「僕は君に夢中なんだよ」

掠れた声。熱い――声。

私もよ。という声は、あなたの唇に消されてしまう。

「君がいなかったら、生きていけない」

それも一緒よ。

「君がいなくなったらどうしよう」

少し困ったように。

「・・・また、出会えばいいじゃない」
「――そうだね。そうだったね・・・」

そうよ。だから、私たちは大丈夫なの。

 

そうお互いに繰り返しても、本当は実際には――私たちが離れ離れになるなんて、これっぽっちも思っていなかった。
だって、そうでしょう?
009が。
003が。
仲間と離れていなくなってしまう――そんな事が、あるわけがなかった。

  

「・・・もうあんな思いをするのはイヤよ」

そう言って、あなたの胸に埋もれてみる。
何年か前の星空。あの時の思いは今も癒えない。

「うん――大丈夫。もう、あんな事は起きない」
ブラックゴーストは滅んだのだから。

気休めとはわかっていても、あなたの言葉を聞いていると安心できた。

「大丈夫。僕はずっと、ここにいる」