いつものように――彼の「大丈夫」を胸のなかで繰り返す。
呪文のように。

そうして私は、やっと泣かずにすんでいた。

そうでなければ、彼の声を思い出し、彼の温もりを思い出し――焦がれて焦がれて、どうしようもなくなってしまう。
もしかしたら、もう二度と会えないのかもしれない。という恐怖にとりこまれてしまう。

そんなことないのに。

絶対、絶対、また会えるのに。

 

諦めたくない。

だから――泣かない。

 

私は009が消えてから、一度も泣かなかった。

 

だって、出会えるんだもの。
決まっているんだもの。
そういう未来しか来ないんだもの。

 

私たちは必ずまた一緒に居られる。

だから、泣かない。

 

 

 

***

 

***

 

 

だから、

 

 

目の前に忽然と現れたあなたを見ても――驚かなかった。

 

「――やぁ、003」

 

ぼろぼろの防護服に、ぼろぼろの009。

だけど、笑顔は変わってなくて。

「・・・・っ」

崩れるあなたを抱き締める。

 

「お前っ・・・009!いったい、今までどうして」

002を先頭にして仲間たちが周りに集まってくる。口々に何か言いながら。

 

私はあなたを抱き締める。
崩れて、まるっきり身体に力の入らないあなたを膝の上に抱いて。

あなたが、どのくらいの時間旅行をしていたのかは知らない。
あなたにとってこの数ヶ月は、別の時間軸に取り込まれたあの時から数瞬しか経っていないのかもしれないし、数ヶ月経っているのかもしれないし、数年経っているのかもしれなかった。
だけど、時間軸がこちらと並んだその一瞬に全てを託したのに違いなくて。

時空を跳ぶにはそれなりのダメージを受ける覚悟が必要だ。

崩れたまま動かない身体。

私はそれをしっかりと抱き締める。
もうどこにも行かないように。

「・・・・・」

彼のくちびるが微かに動いて言葉を紡ぎだす。

「――そうね。あなたの言った通りだったわ」

私は小さく答える。

 

 

  

ほら。ちゃんと会えただろう?