終了まで後15分というとこで、フランソワーズはちょんちょんとジョーの腕をつついた。
うん?と言いたげなジョーが振り返って。
帰りましょ?と言うと、えー?みたいな顔をした。

「……早めに帰らないと、人ごみに巻き込まれるわよ?」

そう言ってフランソワーズが踵を返すと、ジョーは素直についてきた。
ぱたりぱたりバス停がある方へと歩く。

と、後ろから花火の音がした。

振り返ると建物の隙間から花火が見えた。

 

 

「……結構、遠くからでも見られるのね」

そう言いながらジョーの方へ向くと、何だか思いがけず、ジョーの顔が近くにあった。

唇が寄せられて。

流されかけて、フランソワーズはふと来る途中の自分の気持ちを思い出した。
ばっとジョーの口に両手をあてて、遮った。

「……今日は駄目」

ジョーの瞳が軽く見開かれた。

ちょっと口惜しかったんだから。 寂しかったんだから。
今日はその気になれないの。

心の中で呟く。

そぉっと手をのけると、ちょっと、への字になっていた。
思わずフランソワーズはくすりと笑った。

ちょっと、への字が深くなる。

でも、駄目よ。 今日は駄目。

目の前の子犬のような瞳に負けそうになるから。

これだけよ?

そっと手を伸ばした。
気付いて、手を取ってくれて。

フランソワーズは微笑んだ。

 

 

二人、並んで手をつないで帰った。

 

二人の後を花火の音が追いかけた。

 

 

 

 


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