「誕生日の過ごし方」
    今日は私の誕生日。 ひとりでお祝いするのって寂しい? 今日はゆっくり起きて部屋の掃除をして、お気に入りのDVDを観て。 好きなものに囲まれて、好きなことをして過ごす。 私が生まれるのを待っていてくれたひとたち。 私はそんなひとたちに囲まれて育った。 それは何て幸せな日々だったことだろう。     ――そうだわ。ワインを忘れてた。買い置きがあったかしら? ひとりだけのお誕生会。だけど、ひとりぼっちじゃない。 私が生まれた時、喜んでくれたひとたちは今はもういない。 そんなひとがそばにいる誕生日。 いつもと同じようで、少し違う一日。 好きなものに囲まれて過ごす日。 それが私の誕生日。   ・・・そろそろ、起きてくれないかしら? 起こしちゃおうかな。 「ね。ジョー。起きて」 「きゃっ、もうっジョーったら」 私は大好きなひとの瞳に見つめられていた。    
   
       
          
   
         ケーキも買ったし、薔薇も買った。
         お気に入りのワンピースに着替えて、ひとりだけのお誕生会。
         でも全然、そんなことはなくて、私はひとりきりを満喫していた。
         好きなケーキ屋さんに注文していたケーキだったし、薔薇も注文して取り寄せてもらったものだ。
         このワンピースも大好きなショップの一点ものだし。
         それから買い物に出かけて、あちこち覗いて歩いて・・・気に入った雑貨も手に入れた。
         それが、私のお誕生日の過ごし方。
         そして・・・何十年か前の今日という日に思いを馳せる。
         生まれたことを喜んでくれたひとたち。
         あのひとたちがいてくれたから、今の私がいる。
         キッチンへ行く途中、ベッドルームを覗く。
         栗色の髪の主は今もまだ夢の中。
         でも今は、同じくらいの強い思いで喜んでくれるひとがいる。
         生まれてきてくれてありがとう、って、何度も言ってくれるひと。
         
         だって今日は私の誕生日だもの。好きなものに囲まれて過ごすんだもの。
         シーツの間からぬっと手が伸びて――
