|     一ヵ月後のクリスマス。 私はあの香水をつけてジョーと会っていた。 「本当はクリスマスプレゼントのはずだったんだけど」
 照れたように笑うジョーに私はそっと寄り添った。
 クリスマスより前に貰ったプレゼント。
 早めに頂戴とおねだりしたのだ。好きな香りだから、と。
 そして――忘れないように。 自身への戒めとして。 ジョーに他に誰かいいひとがいるに違いない――なんて、自分に自信がなくて勝手に思い込んでいた。
 自信がなかったから、正面切って訊くことも出来ずひとりでもやもやを抱えて。
 でも、もうそんなのやめる。 気になったらちゃんと訊く。そして答えも逃げずに聞く。それがジョーへの、私自身への礼儀であると同時に大切なこと。
 大事なことは言葉にしなければ永遠にわかりはしないのだ。
 「ねぇ、ジョー」
 「うん?」
 「…だっこして」
 「いいよ」
 ぎゅっと抱き締められると安心する。彼の温かさ。腕のちから。彼のにおい。
 彼と私のにおい。 「…フランソワーズって柔らかくていいにおいがする」
 だから抱き締めると気持ちいい、とジョーは囁くように言う。 私はジョーをぎゅっと抱き締めた。
 今日はジョーを私のこの香水のにおいで包んでしまいたい。
 だって、本当は大好きな香りなのだから。   |