超銀「嫌い!」

 

 

 

「ジョーのばかっ、嫌い」


投げ捨てるみたいに言ってジョーの部屋を飛び出した。
追ってくる気配もない。

私はベッドに潜り、泣いているのか怒っているのかわからず自分を持て余していた。

ああもう。
こんな筈じゃなかったのに。
ジョーのばか。

それもこれも全部…


シーツに潜り込んでも離さずにいた携帯に着信があった。
ええそうよ、ジョーからごめんねの電話がくるかもって思ってたのよ、悪い?

けれど、輝る液晶画面をみてがっかりした。それは電話ではなくメールだったから。
まあ、差出人はジョーだったけれど。

なんなのよ、直接言えないなんて全くいくじなしにも程があるわ。
読んでやるもんか、放っておくもんね。
だって私はもうあなたのことなんて忘れちゃって、眠っているから気付かないのよ。
大体、今は真夜中なんだから。

って言っているのに、私の指は勝手にメールを開封していた。いそいそと。


『フランソワーズ。僕を独り寝させるなんてひどいよ。君の柔らかくていい匂いのする肌が恋しくて眠れそうにない』

アラヤダ、これはセクハラメール?

『君が僕のことをいくじなしだって怒っているのはわかってる。そして、そう思う自分に傷付いていることも』

何よそれ

『知ったような口きいてると思う?でも僕はフランソワーズのことなら全部わかるよ。だってずっと見ているし大好きだから』


こうアッサリと己がストーカーだと認めるのってどうなんだろう?


『ふふ。今、僕がカミングアウトしたって頭を抱えたよね?』

 

っ!?

私はベッドを飛び下りドアを開けた。

 

 

**

 

 

「ひどいわ、本当にあなたってストーカー…」
「怒った顔の君はほんとに綺麗だよね」
「ばかじゃない」
「うん。ばかだよ」

ドアを開けて、待ち構えていた彼の胸に飛び込んで。

「…ごめんなさい」
「僕もごめん」

そうして少し長めのキスをしたあと、ジョーの部屋に戻った。


何回目の喧嘩なのか、もう覚えていない。

 

ジョーと一緒に暮らし始めてから。

 

遠距離ではないケンカの仲直りってどうすればいいのか、お互いに探りあって。
いつもちょっとだけ照れくさくなって有耶無耶になる。
それはきっと、いつもそばにいる安心感。

 


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