「コタツの醍醐味」
「あ、もうっ。ジョー、足が邪魔」 「長いから仕方ないさ」 するとジョーはにやりと笑った。 「わかってないなあ、フランソワーズは」 フランソワーズはしばしジョーの顔をじっと見つめ、おもむろにジョーの足を引っ張った。 「うわ!なんだ急に」 ジョーはきまり悪そうに頭を掻くと、真顔で言った。 「だったら、こっちに来てよフランソワーズ。どうして対面に座るんだい?ひょっとして僕を避けているんじゃないかと邪推するぞ」 フランソワーズは息をつくと立ち上がり、ジョーのそばに座った。 「もうっ・・・こんなに甘えんぼだったかしら」 そう言うとジョーは、嬉しそうにフランソワーズを抱き締め、そのままコタツに入った。 「ほら。この方があったかいだろ?」 前方にコタツ。背中にジョー。 どちらも同じくらい熱かった。 「もう・・・のぼせそうよ」 そうしてフランソワーズはジョーの胸に寄りかかった。 これがコタツの醍醐味なら、それはそれで結構いいかもしれないと思いながら。
フランソワーズが頬を膨らませて抗議したものの、ジョーは涼しい顔で言った。
「仕方ないじゃないでしょう?自分の領域というものを考えて頂戴」
「領域?」
「そうよ。私だって足を伸ばしたいもの」
「すればいいだろう?」
「だってジョーの足とぶつかるもの」
「何が?」
「それがコタツの醍醐味ってことさ」
「醍醐味?」
「足と足がぶつかるのも親近感があっていいだろう?」
「それがコタツの醍醐味なの?」
「そう。昔から日本人はこうしてコミュニケーションをとっていたんだ」
「騙されませんからね!あなたがそういう顔をするときは大体嘘なんだから」
「きっとコタツのせいだよ」
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