フランソワーズ。
あの日、そんな話をしたことを覚えているかい?
実は君に言ってないことがある。
わざと言わなかった。
言わなかったことに深い意味があったわけではなく、ただなんとなく言わなかった。
それだけのこと。
それだけのことなのに、こんなに――悔やむことになるとは思わなかったよ。
わかってたら、ちゃんと言ったのに。
「フランソワーズ。僕だってひとりは平気じゃないよ」
聞こえた?
「僕もひとりでいるのは平気じゃない」
聞こえたよね?
「平気じゃないよ。だから」
目を開けてくれ。
僕を――ひとりにしないでくれ。
あの日、ちゃんとそう言っていたら君は僕をひとりになんてしなかっただろう。
そうだよね?フランソワーズ。
でも言わなかったから、きっと、僕をひとり残しても大丈夫だって思っちゃったんだよね?
君にちゃんと言わなかった僕が悪い。
君は知らなかったんだからしょうがない。
言わなかった僕が悪い。
だけど
僕を残していってしまうなんて思いもしなかったんだ。
君が僕より先にいってしまうなんて、そんなこと絶対にないはずだったんだ。
なのに
君は僕をおいて行った。
御丁寧に「あなたは生きて」なんて言うもんだから、僕は後を追えずにいる。
最後まで言葉の鎖で縛っていくなんてずるいよフランソワーズ。
僕にこのままひとりで生きろというつもり?
そんなの無理だ。
無理に決まってる。
だって、君がいないんだから。
フランソワーズ。
フランソワーズ。
僕は――独りは平気じゃない。