「白馬の王子さま」

 

 

「白馬の王子?――そんなの、僕に決まってるだろう?」

何を言ってるんだい、フランソワーズ――と、笑いを含んだ声で言われる。

「いつか迎えに来る運命の相手が白馬の王子だとすれば、きみの相手は僕なんだから、そうに決まってるだろう?」

私が間違った答えを言ったかのように優しく諭す。

「・・・でも」
「でも、何?」
「間違った相手のところに来てしまった・・・って事は、ない?」
「ない」

きっぱり即答するジョー。

「絶対に?」
「絶対に。――大体、どうしてそんなに念を押すんだい?」

ジョーが探るように私の目をじっと見つめる。

「まさか、僕じゃなければよかったのにとか思ってるんじゃないだろうね?」
「・・・わからないわ」
「フランソワーズ!」
「だって・・・何百人も何千人もいる中で、どうしてそうだってわかるの?もしかしたら、あなたの相手は私じゃないかもしれないのに」
「そんなの。――わかるさ」
「どうして?」
「比較なんか必要ない」

ジョーは私の髪を指に絡める。

「・・・見ればすぐわかるよ」

そうして髪の先にくちづけた。

「それとも、僕がきみの白馬の王子じゃ嫌?」
「・・・んー・・・そうねぇ・・・」

視線を外して宙に漂わせると、ジョーは慌てて身体を起こした。
私の視界いっぱいを強引に自分のものにしてしまう。

「フランソワーズ?」

切なく熱い瞳に見つめられ、私はやっと――安心できた。

私の待っていたのはこの人で・・・彼が見つけたのは私なのだ。

「わかっているくせに。・・・嬉しい、って」

そっとジョーの頬に手を伸ばす。手のひらで包み込むようにして。
ジョーはその手に頬を摺り寄せる。

「・・・全く。きみはいつもそうやって僕を脅かす」
「脅かしてないわよ?」
「いいや、脅かしたよ。僕はこう見えても気が弱い小心者なんだ」
「ま。小心者の白馬の王子さまなの?」
「ウン」
「嘘ばっかり」
「ホントだよ――」

 

そうして小心者の王子さまは、私の心と身体を征服した。