「君だから」

 

 

「じゃあ、逆に訊くけど009が僕じゃなかったらどうしてた?」


にこにこ顔でジョーが問う。


「やっぱり同じように誘った?」


フランソワーズはジョーの真意を測りかねてただ黙る。

いっぽうジョーの問いは続く。


「僕みたいな好青年じゃなくてさ。もっとこう…アヤシゲな感じの男とか」
「…あなたもじゅうぶんアヤシゲよ」
「えっ、そうかなあ!」
「そうよ」


もちろん嘘である。
が、よくわからない男という意味では、あながち外れてもいない。


「酷いよなあ。僕はきみが気に入ったから一緒に行くことに決めたのに」
「え?…そうなの?」
「うん」


傍らのフランソワーズの肌がうっすらと染まってゆくのを眺めつつ、ジョーはにっこり笑った。


「崇高な使命とかはさ、とりあえずは無かったよ。なにしろ混乱してたしね。目が覚めたらいきなり君はサイボーグだなんて言われてもぴんとこなかったし」

フランソワーズの髪をそっと撫でる。

「だったら、目の前にある自分の確かな気持ちを信じるしかない。僕はそう思ったからそうした」

そしてそれは正解だった。と、ジョーは結んだ。


「だったら、ジョー」
「うん?」
「女の子だったら、誰でも同じだった?」
「何が?」
「その、私じゃなくても」
「…あのさ。僕の話、ちゃんと聞いてた?」
「だって」
「君を気に入ったからって言ったよね?」
「……」
「まったく。もっと自信を持ってくれよ」

 

あの時、君以外の誰かだったら。

 

僕はたぶん、一緒に行かなかっただろう。

 

 

 


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