注:このお話は永井豪氏原作コミック「鬼公子・炎魔」の二次創作小説です。
(「鬼公子・炎魔」とは「ドロロンえん魔くん」のその後のお話です。
子供だったえん魔くんが大人になった、そういう話です)
DVD(全4巻)の4巻ラストのネタバレ要素がありますので、これから観る予定の方は御注意下さい

 

 

 

 

すみません。冒頭部分がネタバレ要素なので、スクロールしてください・・・

 

 

ちなみに
炎魔(えんま)
雪鬼姫(ゆきひめ)
と読みます。

雪鬼姫は幼名「雪子姫」でしたので
炎魔くんには「雪ちゃん」と呼ばれておりました。

炎魔は基本的に雪鬼姫命です。ベタぼれです。
同時にとってもスケベなのでいつも姫に叱られ氷浸けにされています。

ちなみに
炎魔:閻魔大王の甥っ子
雪鬼姫:雪女の一族
です。

 

 

 

――どんなに愛していても、私は雪であなたは炎。決して一緒にはなれないの。

だから…………


抱き締めたまま、一緒に溶けて蒸気になって消えてしまうのもいいかな、って


そう思うようになっていたの――

 

 

雪鬼姫が――雪ちゃんがそう言ったのは、闇妖怪に喰われた時だった。
ずっとそうして闇を宿し共存していた。

俺は、雪ちゃんのそんな闇に全く気がついていなかった。


だって。


なんなんだよ、「決して一緒にはなれない」って。
そんなことあるもんか。
いや、雪ちゃんがそう勝手に思っていたって別にいいさ。俺には関係ない。
でも、だったらどうして俺にそう言わなかった?
私たちはどうしたって一緒にいられないのよってひとこと言ったらいいだろう。
そして涙のひとつでも流してだな――

――それができたら、雪鬼姫じゃない。……か。

そうだ。

そうだよな。

言えないから、――言えなかったから、だから――闇に喰われた。


くっそう。

ひとこと言ってくれたらなぁ。
いや、俺が気付けばよかったのか?
でもさ。気がつくわけがない、って。
だって俺は、俺と雪ちゃんが一緒にはなれないなんてこれっぽっちも思ったことなんてなかったし
実際、俺たちの間に障害なんてないんだから。

雪と炎は一緒にはなれない?

んなわけねーだろっ。


いいか、しっかり聞きやがれ雪鬼姫。

俺がいくらお前に氷漬けにされても平気なのはなぜだ?
同じ部屋にいても凍らないのはなぜだ?
同時に、お前が溶けないのはなぜだ?

相容れないというのなら、同じ部屋にいることだって無理なはずだ。
俺が炎なら、何度も氷漬けにされたらとっくに死んでいる。
だが俺の炎は死なない。
それは俺が炎魔だからだ。炎魔大王の甥っ子で、いつか魔界を仕切る男だからだ。

お前が何度俺を凍らせても、何度でも甦る。

だから聞きやがれ。
俺と一緒に蒸発しようだなんて無理な話だ。
俺はお前を溶かさない。そしてお前の氷にも負けない。

だから。


だから、安心して――俺と一緒に生きろ。

 

 

***

 

 

「――おはよう、炎魔」
「おぅ。起きたか雪ちゃん」
「もうっ、雪ちゃんって呼ばないでって言ってるでしょ」


私は炎魔と寝ても溶けなかった。
でも――別の意味で溶けたけれど、それは言わない。


「なによ。なにニヤニヤしてるのよ」
「いやあ、別に。――言ったろ?俺と寝ても溶けやしないって」
「う、うん、まあ、そうね」
「でも違う意味で溶けたかな?」
「!!」

アンタが言うなっ!!

「炎魔のばかっ!!」


初めて炎魔と一緒に眠ったその翌朝。

私は彼を氷漬けにした。

 

ちょっと幸せだった。

 

 

 

(2013/11/17up) web拍手 by FC2