「お見通し」
私が だって私は003だし。 だから、彼が言うのって間違っていると思うの。 そうに決まってる。 そう言いながらも私を追い詰めるのはやめない。 「ちょっと、ジョー。やめなさいっ」 それでもジョーは止まらない。 「ジョー、近いわっ」 何よ、その余裕な笑いは。 「そろそろ素直になったら?」 ジョーは私に更に近付いた。 私も頬が熱くなった。 「別に、あなたのためじゃないわ、ただの偶然よ」 私は諦めて、ジョーに屈することにした。 「美味しかった?」 甘えるような声。 私はあなたの親じゃないわとつっぱねるのは簡単だけど。 甘えんぼの癖に、甘え方を知らない男の子。 「残したら承知しないわよ?」 慌てるトコロがやっぱりジョーね。 「ん。ならばよろしい」
「あなたのことは、全て見通しよ!」
というのは理に叶っている。
実際に見通せるちからを持っているし。
絶対、何か勘違いしてわかったつもりになっているのよ。
「だけど、全部わかっちゃったんだからしょうがないだろ」
「嘘よ。ジョーなんかにわかるはずないもの!」
「ジョーなんか、って・・・ひどいなぁ」
朝食の後片付けを終えてリビングに戻ってきた私の前に立ちはだかり、徐々に距離を詰めてくる。
「何を?」
「止まって!」
私はとうとう壁際まで追い詰められてしまった。
ジョーの両手が逃がさないと言わんばかりに、私の体の両側に置かれる。通せんぼするみたいに。
「そうかな?」
「そうよっ」
「ふうん」
「な、なにを?」
「・・・僕の朝ごはんを作ったのは君だろう?」
「朝ごはん?」
「うん。・・・なんでだろうなぁ。僕の理想の朝ごはん。ひとりにしか言ったことなかったのに、何かの偶然かな」
「そ、そうじゃない?」
「そうかな。じゃあ、そのひとりが本当は食事当番じゃなかったとしたら?」
「・・・」
「どうして当番を代わったんだろう?」
「・・・」
「全部お見通しだ、って言ったろ?」
「・・・意地悪ね」
「素直に認めないから」
「だったら、認めたらどうするつもりなの?」
「・・・それはね」
そして顔を寄せてきたから、思わずぎゅっと目をつむった。
「・・・ありがとう。って言いたかったんだ」
耳元で小さく言われた。
目の前には、少し困ったような赤褐色の瞳。
頬が赤い。
んもう、だから嫌だったのに。
「うん」
「たまたま、当番を代わってくれって言われたから」
「うん」
「ねえ、わかってる?」
「うん、・・・言ったよね。全部お見通しだ、って」
「ジョーのくせに、生意気よ」
「何だよ、そのジャイアンみたいな台詞」
「ジャイアン?」
「・・・いや、いい・・・」
「うん」
「・・・おかわりしてくれたものね」
「うん。ねぇ、また作ってくれる?」
でもきっと、そういうつもりじゃないのよね?
「残すもんかっ」
「あれ?なんだか立場が逆転してる?」
「そうよ。言ったでしょう?あなたのことは」
全部お見通しなんだから。