「イケメンの条件」

イケメンの条件。
「さわやか」「誠実」あとひとつは?

 

 

「…優しさ、かなぁ」


優に5分は考えたあとジョーは自信なさそうに言った。

「僕はイケメンじゃないからわからないよ」

苦笑するとフランソワーズにきっと睨まれた。

「ジョーはイケメンでしょう、何言ってるの」
「何言ってるの、ってフランソワーズこそ何言ってるんだよ」
「自分のこと、全然わかってないのね」
「わかってるよ。わかってないのはフランソワーズのほうだろ」
「なによそれ」
「そもそも僕にこんな質問をすること自体おかしいじゃないか。イケメンじゃない奴にイケメンの条件を訊いたってわかるはずないし」
「だってイケメンだもの」
「だから違うって」
「違わない」
「違う」
「いいの、私がそう思っているんだから」
「世間一般的には違うだろう」
「もうっ。じゃあジョーは私だけがそう思っていたら不満なの?」
「えっ」
「私にはジョーは誰よりも素敵でかっこよく見えるの、いけない?」
「いっ…」

いけなくは――ない。けれど。

「でもやっぱりその、僕はイケメンじゃないし普通のひとだと思う…」
「いいじゃない、私にとってはジョー以外はみんなのっぺらぼうにしか見えないんだから」
「のっぺらぼう…それはあんまりじゃ」
「じゃあ、へのへのもへじ」
「…日本の絵描き歌なんてよく知ってるね」
「もうっ、だからいいでしょ、ジョーは素敵なの、誰よりも!」
「え、あ、う、うん…?」
「私にとってはそうなんだから!」
「え…と、…うん」
「いいわよね?」
「――ハイ」

そうしてジョーの首に両腕を回したフランソワーズをジョーはそうっと抱き締めた。

ちょうど廊下を通りかかったジェットと目が合った。
彼のこともへのへのもへじに見えるのかなと思うと、ちょっと彼が気の毒になった。

 

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