「団欒?」
「コタツは日本の文化なんでしょう?」 ジョーは物心ついた頃から教会にいて――もちろん教会にコタツなどなかったからだ。 ジョーの反応が薄いのにフランソワーズは眉間に皺を寄せたが、ともかく手伝ってと有無を言わせずジョーの手を引いた。 そうしてギルモア邸のリビングにコタツがやってきたのだった。 フランソワーズに言われるままコタツに入ったものの、ジョーはなんだか落ち着かなかった。 「何?」 しかしフランソワーズは何か言いたげだった。 「・・・何?」 フランソワーズは下を向くと、もじもじしながら言った。 「隣に行ってもいい?」 なっ、なんで? へどもどするジョーをよそに、フランソワーズは言ったら覚悟が決まったらしくさっさと移動してきて、ジョーの隣にやってきた。 四角いコタツ。 「ええと、・・・フランソワーズ?」 ジョーの声にびくんと肩を揺らすとフランソワーズは早口にまくしたてた。 「あそこに博士が座って、その隣にイワンとハインリヒでしょう、で、ジェットが座ってピュンマが座って、ほら、最初からふたりでひろびろと使っていたらみんな自分の場所がないんじゃないかって思っちゃうし、だから」 ジョーはだんだんピンクに染まってゆくフランソワーズの横顔を見ていたが、ちょっと笑うとそうっと手を伸ばした。 「そうだね。こうして席を決めておいたほうがいいね」 そうしてお互いに手を握り締めた。 *** 数時間後。 帰宅したゼロゼロナンバーたちが見たのは、仲良くコタツに入って眠っている二人だった。 薔薇色に頬を染めて、どこか笑っているようだった。
そう蒼い瞳に問われても、ジョーには何も答えられなかった。
何しろ、知らないのだ。
コタツに関するものは何もかも。
もちろん、コタツが何たるかは知っている。そのくらいは日本人の常識の範囲だ。
が、実際の活用術となると甚だ心もとなかった。
だから、コタツに入ったとかコタツの準備をしたとか、そういう記憶は一切無い。
フランソワーズに問われても何にもわからないのだった。
「家族の団欒の場、なんでしょう?」
「うーん・・・そうなのかな」
「そうよ。家族みんなが集まるリビングに設置するのが正しいのよ。テレビで言ってたわ」
「ふうん・・・」
家族の団欒の場。
そんなもの、あったためしはなかった。
が。
「――で?どうするんだい」
「どう、って・・・こうして入るんでしょう。ほら、足があったまって気持ちいいわよ」
「・・・うーん」
彼女の言う家族団欒には遠いような気がして仕方がない。
何しろフランソワーズは家族ではなく仲間なのだし。
しばし静寂が訪れた。
フランソワーズはじっとジョーを見つめている。
あらぬほうを見ていたジョーも、知らん振りができなくなってフランソワーズと目を合わせた。
「ううん。なんでもない」
「そう」
「ええ」
「ええと、そのぅ・・・」
「へっ?」
その一辺に仲良く並んだふたり。
「だってほら」
コタツ布団の下でふたりの指先が触れ合った。
「そ、そうでしょう?」
「うん」
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