「猫の日の翌朝」
2月22日は「猫の日」なのでその翌朝のお話。

 

 

「ん…」


何だか頬っぺたがくすぐったくてうっすら覚醒した朝だった。
視界に入ったのは自分の部屋に違いない見知った天井。カーテンから透ける日射し。
そして


「…あれ?」


金色の三角なもの。
それが頬に触れてくすぐったかったのだろう。けれど。
これはなんだろう、覚えがない。


ジョーは半身起こし、しみじみ見つめた。
それは猫の耳だった。なぜかフランソワーズの頭から生えている。
フランソワーズはジョーの上で丸くなっていたから、彼が体を起こすとするりと少し下方にスライドする。だから何となく彼女の足元のほうまで視線を送り…尻尾があるのを確認した。もちろん、猫の尻尾である。
更によくよく見れば、丸くなっているフランソワーズの両手は軽く拳に握られ、絶妙な手首の曲げ具合でそれこそまるで

「猫…?」

しかし、ジョーには全く覚えがない。
下着だけつけて猫の扮装をするどんな理由が彼女にあるのか。


ううむ。

わからない。


思い付く事と言えば、昨日はいわゆる「猫の日」だったことくらいである。が、それだって別に話題にしてはいないのだ。
更に言ってしまえば、昨夜は独りで寝たはずだった。

なのになぜフランソワーズがいるのか。しかも猫の扮装で。
ジョーにはサッパリわからなかった。

わからなかった、けれど。


「可愛い…」


そう、フランソワーズは可愛かった。柔らかくて温かくていい匂いがして。
そして、猫の扮装で猫のように甘えているのだ。自分に。

やばい。

何だか体が勝手に反応しかけている。真上にはちょうどフランソワーズがいるのに。

「ん…」

ほら、起こしてしまう。が、微かに身動ぎした彼女の肌がすべすべで気持ちよくて、ジョーは更に反応してしまうのだった。

もうこれは襲ってもいいかな?

胸中問いかけてみたものの、彼の気持ちは既に決まっていた。

可愛いすぎるのが悪い。
勝手にひとの上で寝てるのが悪い。

ジョーはフランソワーズの両肩に手をかけ、一瞬で体を反転させ彼女を腕のなかに閉じ込めた。

 

 

途端、ぱっちり開いた蒼い瞳と出会い、全ては彼女の思惑通りだったことに気付いたのであった。