本当は一緒に行くつもりなんてなかった。
大体、頭の中に意地悪な声が響いていていい加減にしろと思ったし。
導かれるまま行ったら行ったで、目付きの悪い野郎ばかりの集団だったし。
最後の最後まで迷ったって当たり前だったよな、とジョーは思った。
幾度となく思い返すあの時のこと。
思えばそもそもの始まりはそこだったのだ。
後に聞いたところによると、ジョーを覚醒させたのはイワンだったという。
ブラックゴーストとしては、本来なら009を起動させるのはもう少し後だったらしい。
それを聞いてなんだか複雑な気持ちになったものだった。
結果から見れば、これが正解だったろうと思う。が、もしも自分が不完全のまま覚醒し脱出していたら今頃どうなっていただろうか。
そう考えると気分は限りなくブルーになってしまう。
「そんなに迷ったなら、一緒に行くって決めた決め手は何だったの?」
「決め手?」
「ええ。強い動機がなければそうしなかったでしょう」
首を傾げるフランソワーズにジョーはそうだなあと空を仰いだ。
イワンは意地悪だったし、ジェットもハインリヒも斜に構えたやくざ者にしか見えなかった。
ピュンマに至っては、なんだか怖くて近寄り難かったし。
それに。
「…気が強いフランス娘」
最初に会ったとき、睨まれたような気がする。
「何か言った?」
「言ってないよ」
即答する。
「嘘。聞こえたもの」
膨れる頬を横目でみながら、気が強いフランス娘について考えてみる。
あの時、強い口調であなたはどうしたいのと訊かれた。
どうも何も、自分には二者択一しかなかったのにも関わらず。
彼女は何を期待していたのだろうか。
どんな答えがあったというのだろうか。
それは、いまでもよくわからない。
ただ。
「…誘われたこと、なかったから」
ポツリと言っていた。
そう。仲間に入れ、一緒に来いなんて言われたことなどなかったのだ。
最後の記憶は殺人を犯したという濡衣と、誰も信じてくれなかったということ。
それが、あなたの力が必要なのと言われた。単純に嬉しかったのかもしれない。
「気が強い女の子って嫌い?」
「えっ?」
じっと見つめる蒼い瞳。
どことなくしょんぼりして見えるのは気のせいだろうか。
「き、」
嫌いじゃないよ。
嫌いだったら、こうしてあの時のことを思い返したりしない。
それに。
「…強い動機って言ったよね」
そうっとフランソワーズの肩を抱く。
「それはきっと」
君だったと思うよ?
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