「居なくなったら許さない」
君はそう言ったね。 大丈夫だよ。 そう言ったのに、それからの君は僕を放っておいてくれなくなった。 僕が君の指からすり抜けてから、再びここにこうして戻ってくるまでの間。一体、何があったのだろう。 でも。 フランソワーズ。
いい加減寒くなって、部屋に戻ると仁王立ちのフランソワーズに迎えられた。御丁寧に腰に両手を当てている。 「ジョー。もうっ、こんなに冷えて!いったい外で何をしていたの?」 下から見上げてくる蒼い瞳に気押されて、僕は半歩後退した。 「別に」 一拍置いて、両頬が引っ張られた。 「言いなさいよ」 フランソワーズの両手を掴んで、少し屈んでじっと蒼い瞳を覗き込む。 「泣いてただろう?」 両手首を引き寄せ、顔を近づける。 「もうっ、ばか。知らないっ」 フランソワーズは両手を振り解こうとじたばたするけれど、そう簡単には解けない。 「ちょっとジョーっ・・・離してっ」 その耳元に唇を寄せて、僕は囁く。 「――僕はいなくならないよ」 問いかけるようにこちらを向く蒼い双眸。 「僕の居場所は君のところだから」
そうしていつの間にか抱き締められていた。 「・・・痛いわ、ジョー」 それでもジョーは答えない。無言できつく抱き締めるだけ。 「ジョー」 泣いているみたいに言う。 「僕をひとりにしないでくれ」 ひとり。 あなたが私の指からすり抜けて消えた瞬間。 どちらも、私がいまこの時にあなたの隣にいないのが悔しくて悲しかった。 「しないわ・・・ひとりになんて」 私もジョーを抱き締める。 あなたはあなたで、私は私で。 だったら、この一瞬一瞬を信じていくしかない。
もう、ひとりでは泣かない。
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