あなたがいないまま幾度も季節は過ぎていった。 あなたがいなくても、季節は巡り――花は咲くことを忘れず――その繰り返し。 繰り返される、日常。
あなたがいなくても何も変わらなかった。 私はそれが悲しくて、季節が巡るたび花が咲いてそして散るたびに泣いた。
あなたに恋していたことに気付いた時は遅かった。 誰よりも愛しいと思っていたのに、それを伝える時間は永遠に失われてしまった。 それも悲しかった。
だから――
「――好きよ」
あなたの胸の中で言う。
「大好き」
繰り返す。
今度こそ、言いそびれない。 自分ひとりで抱えたりなんかしない。
「――あなたが好き」
桜の花の舞う季節が、やっと少し好きになれた。
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