一瞬、風が通り抜けた。

 

ベランダを通るいつもの潮風とは違う。
潮の香りを含んでいない。

 

ふんわりと、優しく私の身体を包み込む。

髪がふわっと広がって、そっと肩に落ちる。
風が毛先にまとわりつく。

 

ほんの一瞬。

 

 

 

・・・ありがとう。

私、泣いてないでしょう?

 

 

大丈夫よ。

 

心配しないで。

 

 

 

けれど。

見上げた空は滲んでいて、流れ星が幾つも重なって見えた。