自分たちに子供が造れるのかどうか――というのは、やはり最大の関心事だったから、フランソワーズだけではなくゼロゼロメンバーの全員が早い時期に博士からその説明を受けていた。
そして、各々が納得していた。
だから、009と003の「子孫」と名乗る未来人が現れても、別段どうという事もなかった。ああ、そうだろうな・・・というのが概ね一致した感想だった。全員の前でそれを告げられ、真っ赤になった二人が微笑ましくて、しばらくそれをネタにからかうことも忘れなかったけれど。
当の二人はというと、009は相変わらず「僕達は別に・・・」と口の中でもぐもぐ言うだけだったし、003は赤くなって俯くだけだった。
「――全く。僕たちは別に、が聞いて呆れる」
「俺たちが何も知らないと思ってるんだろうよ」
004と002が大きなゼスチャーで肩をすくめる。
「まあ、いいじゃないか。若いんだし」
「そうそ。それにあの未来人の話が本当なら、そのうちあの子たちの子供を見ることができるアルね」
そんな未来も楽しいだろうと全員が思い描く。
家族がいない者。
家族と引き離されてしまった者。
戻る故郷のない者。
それらにとって、ここ、みんなのいる場所そのものこそが家族であり故郷なのであった。
そこへ新しい生命が加わるというのは何て嬉しいことだろう。
抱っこして空を飛ぶのもいいし、ピアノを弾いてあげるのもいい。
離乳食を造るのは楽しいだろうし、色々なものに変身して一緒に遊ぶのも楽しいだろう。
泳ぎを教えたり、身体の上を上らせたり。
そんな平和な未来があってもいい。
そして、そんな未来はもしかしたら、かなりの確率で――現実になるのかもしれないのだ。
「頑張れよ、ジョー」
その日以来、すれ違いざまにそう声をかけられることが増えた009は首を傾げた。
「頑張れ、って・・・何を頑張れと言うんだろう?」
きみはどう思う、フランソワーズ?
イワンを抱いてミルクを飲ませているフランソワーズに問いかける。
「どう、って・・・そうねえ」
フランソワーズはふふっと笑ってジョーを見つめた。
「それはたぶん・・・」
私たちが一緒にいればわかるんじゃないかしら。
声に出しては言わなかったけれど。
「・・・そうかな」
ジョーは言う。
「そうよ。きっと」
フランソワーズも言う。
きっと、そんな未来が待っているのだろう。