「だって、当たり前でしょう?演技なんだし、その時は相手のことしか見えてないし」
「だからだよ」
私の言葉を遮るように。
「だから・・・嫌なんだよ。そういうの、観たくないんだよ」
プイっと視線を逸らせて、それきり黙りこんでしまう。

・・・このひとって。

「・・・ばかね」
思わず笑ってしまう。
「演技なのに」
「わかってるよ。だけど嫌なんだよ」

ばかなんだから。
でも・・・だいすき。

そっと腕を伸ばして、ジョーの首筋に抱きつく。
「ふ、フランソワーズ?」
戸惑っているくせに、すぐに私の背中に腕を回して抱き締めてくる。愛しいひと。

「ジョーはばかね」
「うるさいな」
「でも・・・」
「うん?」
「そういうところも、好きよ」
言って頬にキスをする。

 

結局、コンサートには間に合わなかった。
でもその代わり、次の私の公演には来てくれる。って約束したから
まぁ・・・いいかな。

そう。

公演は観なくても、花束を持って楽屋には来てくれる。

だって、ずっと夢だったんだもの。