「さいぼーぐ・しまむらくん 我が家へ来る」
7
しばらくして。
お互いを見詰め合うジョーとお嬢さん。
どちらからともなく、微笑んで。
そうしてやっと足元に気が回るようになり・・・
「あ。なんか踏んでる」
むにゅ。
「えっ・・・・あ!!かめちゃんっ!!」
お嬢さんが慌てて抱き上げます。(でも、肩にはジョー島村の腕がしっかと回されております)
「大丈夫・・・?」
心配そうに覗き込みます。
「あ。首のところが、ほつれてる・・・」
そうなのです。ジョーにジャグリングされた後遺症で、首がもげそうになっているのです。
縫い目からウレタンが顔を出しているのです。
更にいま、ふたりに踏まれてなんだか平たくなっているのです。折り畳まれたみたいに。
「かめちゃん・・・なんだか、急に古くなったみたい・・・」
困ったように呟くお嬢さん。
さて、どうしましょう?
数分後。
お嬢さんの膝の上で、ちくちく縫われているかめのしまむら。
今は平たくありません。元通りにふかふか♪になっています。
でも、どうやってふかふかになったのかはあまり思い出したくないのでした。
(思い出すと、ちょっとブルーになるのです)
そして。
ジョー島村はというと・・・
ソファに寝転がり、お嬢さんの膝まくらを満喫中っ!!
ふたりのしまむらに膝を貸すお嬢さん♪
その口元には笑みが浮かんでいるのでした☆
さて。
そんなふたりの様子を見ていると。
そろそろかめも、自分のふらんそわーずに会いたくなってきました。
(えーとえーと「そろそろ」とはいっても、作中の時間経過は半日もたってないんだけど・・・)
僕の、ふらんそわーずっ・・・もうちょっとしたら帰るからねっ!!
気持ちはもうかめお嬢さんの元に行っているのでした。
「・・・重くない?大丈夫?」
お嬢さんが、かめの背中に箱を括りつけています。
中にはお土産が入っているのです。
「だいじょーぶ♪ぼくだってぜろぜろないん、なんだからさっ」
「でも・・・」
それでも心配そうなお嬢さんの瞳をじっと見つめ、かめは微笑みます。
「ふらんそわーずは心配性だなっ」
ぴき。
どこかの誰かの血管が危険な音をたてました。
でも気付かないお嬢さんとかめ。
仲良く「お別れ」しています。
「今度はそちらのフランソワーズも連れてきてね?」
「うんっ」
「なんだか、とっても話が合うような気がするの」
「わかった、言っておくよ♪」
ふらんそわーずと僕のふらんそわーずが並んだ所を想像して、にまにましてしまうかめ。
「あ、でも・・・」
お嬢さんは何やらひとりぶつぶつ続けます。
「ジョーがいない時にしなくっちゃ。だって、・・・きっと可愛いもの。かめのフランソワーズ。
かめのジョーもとっても可愛いんだから、数倍可愛いに決まってるのよ。
だとしたら・・・やだわ、絶対ジョーも気に入っちゃうわ!!
それに、かめとはいっても同じフランソワーズなのだから、きっと彼女もジョーを好きになっちゃうわ。
そんなの嫌よ。絶対、駄目だわっ」
想像するだけで、ちょっぴり涙ぐんでしまったりなんかして。
「・・・ふらんそわーず?」
お嬢さんの様子に心配そうなかめ。
「ほら、もうそろそろ行くんだろう?」
あくまで笑顔を保つジョー島村。優しげに、ふたりの会話を邪魔します。
お嬢さんとかめが別れを惜しんでいるのがなんとなーく不愉快なのです。
かめとはいっても、「しまむらじょー」なのですからっ!
お嬢さんを気に入っているのは一目瞭然なのです!
「あ、そ、そうだね・・・もう行かなくちゃ」
ジョーの顔を見て長居は無用と悟るかめ。
「じゃ・・・またね。お土産ありがとうっ」
手を振って、ドアを出ます。
「気をつけてね」
お嬢さんも手を振ります。
ところが、ジョーは。
あくまでも笑顔なのですが、なぜか数メートル後退したのです。
「・・・ジョー?」
お嬢さんが不審に思った瞬間!!
「加速装置っ!!」
かちっ☆
げしっっっっ!!!!
ばびゅーーーーーーーん
きらーん☆
「・・・・あ。」
呆然とするお嬢さん。
思わず胸の前で手を組んでそっと祈りました。
どうかどうか、かめちゃんが無事におうちに着きますように。
そうして、ちらっとジョー島村を見つめます。
・・・まったく、このひとって・・・
「ん?」
「ううん。何でもないわ」
・・・でも、好き。
と、いう訳でっ!!
おそらくかめのしまむらはマッハ5くらいの勢いで飛んでいったはず!!
(加速したジョーに蹴られて飛んでいったのです)
でも、彼だって「しまむらじょー」なのですからっ!
加速には慣れてるはず!!例えマッハ5でも!!(ホントか?)
かめお嬢さん、あとはよろしく!!