「えっ?」
ふたりで暮らすと決めた日から、メンテナンスだけはしっかりしてもらっていた。当分(つまり数年くらいだろうか?)は放っておいても大丈夫なくらいに。だから、こんなに早く耳が故障するなんてことはないのだ。 ジョーは軽く頭を振った。 ジョーは気をとりなおし、ご飯を口に運んだ。なぜなら今は、フランソワーズとの楽しい夕食の時間なのだ。 しかし。
「だから、今日は」
目が合った。
って、何を? にっこりするフランソワーズ。 いや、無い。 しかし。 ふたりで暮らしてゆくうちにそういうタブーはなくなったのかもしれない。 ジョーは強引に己を納得させた。
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食後にフランソワーズがにっこりして差し出したのはポッキーの箱だった。
ポッキーと勃起を聞き間違えるなど、きっと自分が汚れたエロガッパだからだろう。
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「耳のメンテナンス?」 ポッキーと勃起を聞き間違えたと清らかなフランソワーズに言えるわけがない。しかも、そんな聞き違いをするのは汚れたエロガッパに違いないのだ。自分がそれに該当するという告白は、わざわざしなくてもいいだろう。 「何か不具合でもあったの?」 単なる聞き間違えだから。
続くフランソワーズの言葉にジョーはただただ呆然とするしかなかった。 「え、なっ…ええっ?」 フランソワーズはうろたえるジョーに何故かにっこりし、妖しい呪文を放った。 「ポッキーが勃起に聞こえたのよね?」 なぜそれを知っている。誓って言うが、ジョーは声に出して言ってはいない。 「だから、耳のメンテナンスに行こうと思ったんでしょ?」 そうだけど、しかし何故それがわかる? 「だったら、メンテナンスの必要はないわ。ジョーの耳は正常よ」 なんと、実はフランソワーズもエロガッパだった!? ジョーがあまりにも驚いた顔をしたからだろう。フランソワーズは少し頬を染めて種明かしをした。 「今日、帰り道でね、高校生の男の子たちが話してるのを聞いちゃったの。今日はポッキーの日だけど、勃起って聞こえるよねって。男子だったら絶対そう聞こえるし、もし彼女がそう言ったら絶対襲うなって。だから試しに言ってみたんだけど、ジョーは紳士ね?…きゃっ」
まさか紳士なわけはなかった。
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