「アイスの行方」
そんなわけで今日も仕事帰りに僕はアイスを買う。 コンビニだと高いから、近所の食料品店で購入するのが日課になりつつある。 さて、今日はどれにしようか。 …………。 いや、実は決まっているんだがそれを選ぶとさすがにあざとすぎるだろう。 どんな顔で僕を見るだろう。 とてもじゃないが買えない。 ……考えすぎじゃないだろうか。 うん。 そうだ。それ以外に他意は無い。 断じて無い。 「!?」 もちろんアイスケース内に一個しかなかったわけじゃない。が、僕は思わずそれを躊躇いなく買い物籠に入れた人物に目を遣った。 「え」 「ジョー!?」 ――フランソワーズ。 多少の気まずさが漂った。 行ってくるわと背を向けたフランソワーズ。
うちにはエアコンがないから(あるけど使えないから)暑さをしのぐには必要不可欠なのだ。
催促しているみたいだし。
それに、冷凍庫を覗いてそれを見つけたらフランソワーズはどんな顔をするだろう。
だ、だめだ。
僕はカップに入ったかき氷を掴んだ。
いやでも待てよ。
だってほら、価格を比べたら明らかにそれのほうが安い。僕らの経済事情を考えたら、安いものを選ぶのは当たり前だ。
僕は大きく息を吸うと、それに手を伸ばした。が、一瞬早く誰かにさっと奪われた。
「どうしてここに」
「いつもここでお買い物してるもの。ジョーこそどうして」
「近いから」
そうしてお互い見つめあって。
「えーと。……会計しないと溶けるよ」
「え。あ、そうね」
今夜も熱くなりそうな予感がした。