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霞がかかったようにぼうっとしていた頭が瞬時に覚醒する。 ・・・もう。ジョーのばか。 けだるい身体を横たえてまどろんでいたのに。 まだ、あなたの身体の熱さが残っていて。 「どうしてそんな事を訊くの?」 微かに慌てたように、私の肩に唇を押し付けてくる。 ジョーの頭を離し、茶色の瞳を見つめる。 「そうだわ。一度、訊こうと思っていたの」 「『僕たちは別に』の後に、何て言うつもりだったの?」 「僕たちは別に・・・ただ一緒に寝ているだけだよ?・・・ってね」 |
ヤハリ「ホンモノ」ハ違ウ。
慎重に。 慎重に。潜行して・・・ |
ベッドサイドに置いたフランソワーズの携帯が着信を示す色に変わった。 けれども気付かない。 いまそこに注意を払うものはいない。 今は、お互いとお互いの事しか見えていない。
数時間後。 「フランソワーズ。携帯が光ってるけど」 じゃれついてくるジョーを制して携帯を開く。 一瞬、鋭く息を吸い込む気配にジョーも身体を起こす。 「どうした?」 「・・・どうして」 ただただ一面の文字。「カール」という文字ばかり。 「・・・なんだこりゃ」
『僕は君を忘れたりなんてしない』
「――まさか。確か記憶部分は破損したはず」 そうっと手を外し、目を開ける。 お互いがお互いの視線を捉える。
――あなたは、ほんもの?
――君は、ほんもの?
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