「ブラインドデート」
〜3組のゼロナイ〜
「――で?どうするの?」 10分後。 それぞれがそれぞれの本来の相手の元にいた。 「・・・やめましょう。やっぱり」 答えたのは、新ゼロフランソワーズ。 「だから言ったのに」 ポツリと言ったのは旧ゼロフランソワーズ。顔が赤い。 三人の009は誰も声を発しない。 そもそもの発端は009会議だった。年始の温泉旅行以来、時々彼らは連絡をとりあっていたようなのだ。 今回は、「くじ引きであたった相手と一日デートする」というものだった。 たまには別のフランソワーズと一緒に過ごすのも楽しかろう――という、全く意味のない企画だった。 しかし、そう言っても彼らは聞かずに今日このような状態になっているのだった。 ナインにいきなり殴られた超銀ジョー。 落ち込んでその場にたいく座りになり周囲との連絡を絶った新ゼロジョー。 スリーを超銀ジョーから引き剥がし、ひしと抱き締めたナイン。 こんな企画、そもそも009たちが耐えられるわけはないのだった。 「・・・フランソワーズ」 顔の上のタオルを除けて、褐色の瞳が超銀フランソワーズの双眸を射る。 「うん。・・・今日も綺麗だ」 「ジョー。ねえ、こっち向いて?」 フランソワーズが顔を覗き込もうとしても顔をあげない新ゼロジョー。 「もう・・・私が他のひとを見たからって、あなたのことを嫌いになるわけないでしょう?それとも、他のひとを見ちゃいけないの?」 フランソワーズはジョーに顔を近づけ――そうして微笑んだ。 「・・・知ってるわ」 ――胸に穴が開くところだったんだぞ。 「・・・ね。ナイン。もう放して」 フランソワーズを泣かせるな――と、超銀ジョーに躍り掛かったナイン。 泣いたのはあなたのせいなのナイン――と言ったスリー。 「――まったく、僕が他の子と手を繋いだからって泣かなくても」 ナインは背中からスリーを抱き締めていた。そうっと耳元に口を寄せる。 「あんなの、ただ手を繋いだだけで何にも意味はないよ」
―10―
そんな中、収拾をつけようと声を発したのは超銀フランソワーズだった。
超銀ジョーに膝枕をして、彼の顔に冷やしたタオルを当てている。
彼女はというと、たいく座りで顔を膝に伏せたままの新ゼロジョーをあやすのに追われていた。
彼女は肩に回されたナインの腕を気にしながら、けれども嬉しそうに――じっとナインを見つめている。
同じ昭和の009として共通項があったのかもしれない。
ともかく、いっけんぶつかりそうな三人なのだけれども、妙な企画を考える時は意気投合するようだった。
当然、三人の003は反対した。
そんなもの、見なくてもわかるのだ。どんな結果になるのか。
絶対に、言い出した本人たちが耐えられなくなるのに決まっている。
「なあに?」
「・・・そうかしら」
「うん。今日はまだ言ってなかったから」
「もうっ・・・ばかね」
「・・・・」
「ね。ジョーったら」
「・・・」
「なあに?聞こえないわ」
「イヤだね」
「だって・・・恥ずかしいわ」
「そんなの平気だ。どうせ誰も見ていない」
「それはそうだけど・・・」
「・・・だって、イヤだったんだもの」
「コドモだなぁ」
「でも――」
「・・・本当は、恋人同士だけの繋ぎ方っていうのがあるんだよ」
「――そうなの?」
「ウン。今度・・・教えるよ」