〜003を救出せよ〜
「原作」

 

 

「009、助け・・・」

 

台詞を言おうとした003はそのまま固まった。
自分を包囲に来るはずの黒タイツのひとたちの姿がない。既に用意が整っていなければならないのに。

「・・・?」

敵がいないんじゃ、ゲームにならないわ・・・と思った時、正面の扉がゆっくりと開かれた。

「――ジョー!?」

ゲームは中止みたいよと言いかけた唇が凍る。
急ぐ風でもなく、のんびりと歩を進める009は両手に何かを引き摺っていたのだ。

「――やあ。無事?」
「え?ええ・・・」

彼が引き摺っているものを見て目を瞠る。
それらはどう見ても、黒いタイツのひとたちだったから。

「ジョー、それ・・・」
「ああ。敵だ」
「敵だ、って・・・」
「助けに来たよ。フランソワーズ」
「え、ええ。ありがとう」

黒タイツを床に放置し、009はひらりと舞台に飛び乗って003の縄を解いた。

「これでよし」
「・・・あの、ジョー?」
「なに?」
「・・・聞いてるわよね?」
「何を?」
「これがその、・・・ゲームだってこと」
「ゲーム!?」

ちゃんと言ったはずだったのに、一晩寝たらすっかり忘れたらしい。

「――ああ、そうだったっけ。いやぁ、そうか。参ったな」

照れたように笑いながら頭をかくその様子を見て、003は呆れるのと怒るのとどちらにしようか迷い、
けれどもどちらもやめた。

「・・・もう。ジョーったら」

何故なら、009の額には汗の粒が浮かんでいたのだ。


――ゲームなのに。私が捕まったと聞いて急いだのね?


茫洋とした顔で微笑む009。

「――帰ろう、フランソワーズ」

ジャンプして舞台から飛び降り、フランソワーズに向かって手を差し出す。

「ええ」

フランソワーズは微笑むと、ジョーの手には掴まらず――そのまま彼の胸へダイブした。

「うわっ」

フランソワーズを胸に抱き締め、ジョーはその勢いのまま背中から仰向けにひっっくり返った。

「・・・フランソワーズ!」
「ジョー」

好き。

声に出して言うかわりにそのまま彼の胸に顔を埋めた。