〜003を救出せよ〜
「超銀」

 

 

009、助けて!

 

という前に、003はちょっと考えた。
何でもかんでも009に助けを求めるという設定は、かなり気に入らない。
まるで自分が自力ではにっちもさっちもいかない状況に陥ってしまう考えなしのひとのようで。

――私は違うわ。ジョーに迷惑なんてかけない。

けれども、背中に回された両手の戒めは簡単には解けそうも無かった。

――ジョーだったら、簡単に引きちぎるのに。私は無力だ。

それだけの事が悔しい。
同じく改造されたのなら、どうして彼と強度を同じにしてはくれなかったのだろう。
だから自分はいつも守られる側になってしまう。

彼の負担にはなりたくないのに。

 

「――こら。僕を呼ばなきゃダメだろう?」

 

頭に大きな手が載せられる。

「えっ?ジョー?」
「僕を呼ばないとスタートしないんだから。いったいいつまで待たせる気かい?」

予定時刻より数分が経過していた。

「・・・だって、私」
「だってじゃない。――いいかい、フランソワーズ。僕に遠慮なんかするな」
「してないわ」
「してる。どうせまた自力で何とかしようと思っていたんだろう?」
「それは・・・」
「――まったく」

そうして背後に回り、あっさりと縄を解く。

「・・・血が滲んでいるじゃないか」

何とか戒めを解こうと手を動かしていた003の両手首は縄にこすれて擦過傷ができていた。

「・・・僕のフランソワーズに傷をつけたな」

そう耳元で言って、009は背後から003を抱き締めた。

「許さない」
「えっ・・・ジョー?」
「僕のフランソワーズだ。例え自分でつけた傷でも、僕のものに傷をつけるなんて許せない」
「あの」
「――僕が本気で怒ると怖いんだ」

 

 

――ええと、で、ゲームは?

 

 

という周囲の黒タイツの方々。

けれども、舞台上の二人の影がひとつになるのを見て、毒気にあてられたみたいにぞろぞろと体育館を後にするのだった。