〜003を救出せよ〜
「旧ゼロ」

 

 

「009、助けてっ」

 

スリーの声が響いた途端、殺到する黒タイツのひとたち。
入り口と言う入り口を武装した敵が固める。いかに009といえど、簡単に突破することは難しい。

「・・・ナイン。大丈夫かしら」

タイムトライアルなのに、一向に気配のない009にふと不安になる。
昨日はしつこいくらい段取りをチェックしていたから、まさか忘れているということはないはず。

ではいったい・・・。

そう思ったのはほんの数秒。
次の瞬間、003は誰かに小脇に抱えられ宙に跳んでいた。
三段跳びの要領で、体育館を横切るのは数歩。あっという間に外に出ていた。

「ナイン!?」

そっと地面に降ろされながら、いったいこの人はどこから現れたのだろうと思う。
が、その質問を舌にのせる前に、高笑いが響き渡った。

「はっはっは。この僕を出し抜こうったってそうはいかないぞ!!」

両手を腰にあて、大きく足を開いて踏ん張り仁王立ちになって胸を張っている。

「最初から潜んでいたのさ!スリーが僕を呼んだ瞬間に救出できるようにな!」
「・・・・ナイン?それって・・・」

ルール違反じゃ・・・。

「ふん。大体、設定が気に入らない。どうしてスリーが囚われの身になるんだ。この僕がついていながらそんな目に遭うわけがないだろう!気に入らないね!」

眉間に皺が刻まれ、険しい表情に変わってゆく。

「だから僕は、スリーがここへ連れて来られるまでずっと後をつけていたんだ。いつでもすぐ助けられるのに、僕を呼ぶまで待ったんだぞ。いちおう、ルールだからな!」

そうして大きく息をつくと、傍らの003をじっと見つめた。

「まったく、きみと一緒にいると退屈しなくていい」
「・・・ゲームなのに」
「こんなくだらないゲームなんか僕は許さない。もうするなよ」
「・・・ジョー」

そっと009の腕に手をかけた003の瞳が一瞬大きくなった。
何故なら、彼の腕は汗びっしょりだったから。

――気に入らないのに付き合ってくれたのね?私が面白そうねって言ったから。

しかも、律儀にルールを守って。

「きみが攫われるゲームなんてもうイヤだからな」
「・・・はい」

もうしないわ。