むっつりと黙り込み、険悪な雰囲気の3人の男性。

ひとりは黒いシャツ姿。
もうひとりは茶色のスーツ姿。
そしてもうひとりは真っ赤な――不思議な服装だった。

その誰もが端正な顔を不機嫌で覆い、胸の前で腕を組みそれぞれが別の方向を向いていた。

近くのテーブルには誰も居ない。
皆、ヤクザ者の会合に違いないと確信し、近寄れないのだ。

しかし、そのすぐ隣のテーブルは対照的に華やかだった。
何しろ美女三人組である。
蒼い瞳の三人の女性はそれぞれが綺麗で愛らしかった。何を話しているのか、笑顔満開である。
それを聞いてみたい気がするのだが、いかんせん「ヤクザ者三名」がいるため誰も近寄れない。が、おそらく聞いたら誰もが驚いたことだろう。何しろそれは。


「行かせないって物凄い剣幕だったのよ」
「うちは、帰れの一点張り」
「いいわねぇ。こっちは有無も言わせず拉致されちゃったわ。しかも、オシオキですって!」

きゃーっと笑い合う。

「ほんと、ヤキモチ焼きなんだから。もうちょっと信じてくれてもいいと思うわ」

スリーが頬を膨らませる。

「僕が代わりに行く、なんて言うのよ。もう――ばかなんだから」

新ゼロフランソワーズがちらりとジョーに目を遣る。

「ずうっと怒っていたんですって。電話もメールも全部放置。酷いわよねぇ」

超銀フランソワーズが唇を尖らせる。

そして、三人で顔を見合わせて。


「ほんと、バカなんだから!」


と冷たく言い放ち、


「でもそんなところがいいんだけどね」


と笑い合った。
「ヤクザ者三名」がぴくりと反応する。


「――行かせない、って腕を掴まれたけど・・・ちょっと嬉しかったの。それって変かしら、ね」

小さく言って頬を赤らめるスリー。と同時にナインもちょっと頬を染めた。


「・・・道の真ん中でたいく座りするんじゃないかとハラハラしたわ。・・・嬉しかったけど」

ちらりとジョーがこちらを見た。
目が合う。

彼の瞳はいつもの色だった。


「オシオキって一体、何かしら」

超銀フランソワーズはあっさりと言って、ジョーの方を見つめた。

「ねえ、ジョー?ご予定は?」
「――何が」
「オシオキの件よ」
「・・・・・・・・・いいよ、もう」
「あら、いいの?」
「・・・合コンじゃなかったわけだし」
「そう。――残念ね」


そう言った瞬間。

店からふたりの姿が消えていた。後には微かに風が残っていた。


「あーあ、行っちゃった」
「でも・・・そろそろ私たちも消えない?」

そう言ったふたりのフランソワーズの後ろにはそれぞれのジョーが立っていた。

「そうね。――ねぇ、ジョー。このワンピースどうかしら。女の子だけでお食事だから、ちょっとお上品な感じにまとめてみたのよ?」
「――うん。いいんじゃない」
「あら、それだけ?」

ナインはちょっと天を仰ぎ――そして、言った。

「・・・可愛いよ」


新ゼロのふたりはお互いに見つめ合ったまま、他には何も見えないようだった。

「駄目よ。ジョー。他の子は見ないで」
「君こそ、他の男は見るな。それが009でも駄目だ」
「言ったでしょう?私のジョー以外はへのへのもへじにしか見えない、って」

ジョーは少し笑った。

「・・・酷いなぁ。ほら、スリーがこっちを見て怒ってるぞ」
「駄目。他の子を見ないで」

 

 

 

三人の003が本当に合コンをするつもりだったのか、それとも単に009を試しただけだったのかは定かではない。