「真相は・・・」

 

「好きです!愛してます!」

 

土下座なんて初めて見るわ。


フランソワーズはどこかひとごとのように、ぼんやりとその光景を見た。実際にはひとごとなどではないのだけれど。
しばし土下座する青年を見つめ、そして困ったように傍らの戦士に目を向けた。
が、当の戦士は腕組みをしてあさっての方を向いている。
黄色のマフラーだけが揺れた。

フランソワーズは息をつくと、再び目の前の彼を見た。

「あの。無理なのよ。わかってちょうだい」
「何がですか!だって、いまつきあってるひとはいないと言ったじゃないですか!」

確かに言った。
が、こうなることを予想できていたら、違う答えを用意したのに。

フランソワーズがちらちら黄色のマフラーの主を見るから、青年は更に声をあげた。

「まさか、ジョーの兄貴とつきあってるなんて言わないですよね!」

ジョーの片頬がぴくりと動いた。
でもこちらは見ない。

「どうなんですか、フランソワーズさん!」

フランソワーズは困ったように青年を見て、更にジョーを見た。助け舟をだすつもりはないらしい。

「・・・あのね」
「なんすか、姐さんっ」
「姐さんはやめて。・・・その、・・・ね。私はそこにいるジョーの」
「ジョーの兄貴がどうだっていうんですかっ」
「だからその、・・・ジョーの兄貴のオンナなの」

ぽかんと口を開けた青年。

その目の前にジョーは割って入ると不敵な笑みを浮かべた。


「悪いな。これは俺のオンナなんだ。諦めろ」

 

 

 

 

 

「知らないっ。ジョーの意地悪。助けてくれたっていいのに」
「あのくらい自分でどうにかしてくれないと困る」
「そうそうあることとは思えないんですけど」


膨れるフランソワーズにジョーは口元を緩めた。


「いいじゃないか、ああいう手あいにはどう答えるのかわかったんだし」
「嫌よ、もう言わないわ」


並んで歩いていたフランソワーズが足を止めたから、ジョーも同じように止まった。
問うように彼女を見る。


「だって、私があなたのオンナなんじゃなくて、あなたが私のオトコなんだから!」


ジョーの目が丸くなる。


「・・・へぇ。じゃあ僕が困った目に遭ったとき、そう言って助けてくれる?」
「まさか」
「言ってよ」
「言いません」
「フランソワーズ」
「ん、もうっ」

フランソワーズはべたべた甘えてくるジョーの腕をかいくぐると言った。


「だったら、あなたも気を付けてちょうだい。可哀想だからってホイホイついて行かないこと。車に誰がが乗ってたら、ちゃんと降ろすか降りなかったら車ごと置いてくること(注:王女の一件です)。あなたは私のオトコなんだから、そういう自覚を持って行動してくれないと困るわ」

「困るんだ?」

「そうよ。だって妬いちゃうもの!」


妬くんだと嬉しそうに言うジョー。
まさかそれを見たくてアレコレ女の子に接触してるんじゃないわよね?と見つめるフランソワーズ。


真相は・・・