「晴れの日は」

 

 

「じゃあ、何だ。雨の日と風の日はわかったが、晴れた日は会いに行く理由がないってことか」


そりゃ難儀だろうよとジェットは鼻を鳴らした。
フランソワーズはほんの少し首を傾げ、そうしてすぐにくすくす笑いだした。

「やあねぇ、ジェットったら」

いったい何の心配なのと続けた。

「何ってつまり、お前のほうから会いてぇなって思ってもそう都合よく雨や風になるもんかよってことさ」

今度はけっと喉を鳴らした。
いったい俺は何を言ってるんだと呟きながら。


「うふふ、大丈夫よ心配しなくても」

フランソワーズはにっこり笑った。

「だって、晴れた日はジョーのほうから来てくれるんだもの」


月が見える夜。


見えない夜。


星が煌めく夜。


静かな夜。


ひそやかなノックの音と共にやって来る恋人。


「なんだよ、狼男かよ」
「いいの、一緒にいたいだけだから」
「・・・あ、そ」

結局、毎晩一緒ってことじゃねーかと呆れたように言うジェットに、あらうらやましいのとフランソワーズは返した。

「そんなんじゃねーよ」
「ジェットも彼女のところに行けばいいじゃない」
「いや、それは・・・そうだけどよ」

そうもいかない事情ってもんがあるんだ。

ジェットは胸のなかで言う。

いくら一緒にいたくても、一緒にいた時間が長ければ長かったぶん、後で辛くなる。
明日は生きていられるのかわからないから、無責任なことはできない。

思いを残すようなことがあってはならないし、したくない。


だから。


運命を共にしているという意味では、若い二人がうらやましいと言えなくもないかもしれない。


「私たちはね、後悔したくないから一緒にいるの」


もっと一緒にいればよかったと泣きたくはないから。


二人一緒に果てるならいいけれど、きっとそうはならない。

だから、残るほうが悲しくないように


「今のうちにたくさん会っておくの」