「膝の上」子供部屋バージョン♪

 

 

フランソワーズの催眠・薬物投与の影響も抜けた頃。
再び、ミッションのために出発するゼロゼロナインとその一行。

いつものように、009が操縦席に就き・・・

「――発進する。みんな配置についてくれ」

ハイハイ、と一同自分の席に向かう。

「002はコ・パイシートについてくれ。004は――」

次々に確認・指揮をとってゆく。

「――そして、003は」
「わかってるわ。博士と001のところに行ってるわね」

デッキを後にしようとした003に

「いや。違う」

きっぱりと言う009の声が響く。
何事かと全員の目が彼のほうを向く。

けれども、009は操縦席に座り、前方を見据えたまま微動だにしない。
その背中からは鬼気迫る何かが立ち昇っていた。

「――ジョー?」

思わずナンバーではなく名前で呼んでしまい、はっと口を押さえる003。
ミッションの時は、なるべく名前では呼ばないように気をつけていたはずだったが。

静寂。

「・・・おい、009?」

隣の席の002がおそるおそる声をかける。

「003がなんだって?」

「003は――」

002に促され、やっと言葉を継ぐ009。

 

「003は、僕の膝の上だ」

 

――はあ????

全員の頭上に疑問符が浮かぶ。

「009、オマエ真面目な顔して何言って――」

言いかけた002の横をすっと赤い防護服が通り過ぎる。

「――しょうがないひとね」

そのまま、その声の主はパイロットシートに座るひとの膝の上にそうっと座った。

「――こうしてたら操縦できないでしょ?」
「・・・そうだけど、でも」
「だめ。大体、恥ずかしいわ。みんないるのよ?」
「だって、この前までしてたじゃないか」
「あの時はあの時。今は今よ」

この会話は、互いのおでこをくっつけあった二人の間で小声で交わされているのだが、他のメンバー全員が聞き耳をたてている今は拡声器で話し合っているようなものだった。

「・・・ダメ?」
「だめよ」
「フランソワーズがここにいないと落ち着かない」
「もう。そんな事言って。ずうっと抱っこされてるわけにはいかないのよ?」
「でもこの間までそうだったのに」
「拗ねないの」
「・・・・」
「あとで、ね?」
「・・・あとで?」
「そう。ミッションが終わったら。ね」
「・・・本当?」
「本当よ」
「約束する?」
「私が約束を破ったことがあった?」

それはなかったので――ジョーはやっと膨れ面をやめて頬を引き締めた。

「――003は博士と001のそばに行っててくれ」

「わかったわ」

 

003がデッキを後にする。

 

静寂。

 

・・・・・静寂。

 

・・・・・・・・・・・・・静寂。

 

 

「・・・オイ。発進しないのかよ?」