「is this LOVE」

 

片思い、って幾つも種類があるのね?

 

ジョーは初恋のひとではないから、初めて好きになったわけではないから、
どういう風に想えばいいのか、どんな風に接したらいいのかはちゃんとわかっていたはずだった。

なのに。

なかなかうまくいかなかった。

 

彼と偶然二人きりになった時は心の中でガッツポーズをしていたくせに、結局ひとこともまともに話せなかったり。
こっちを向いてくれたらいいのにと彼の横顔を見つめて念じていたら、本当にこちらを向いてくれたのに自分から目を逸らしてしまったりとか。

散々だった。

こんなのまるで、初恋をもう一回やっているみたいで。

これではいけない。

こんなのはダメだ。

一念発起して、買い出し係を代わってもらった。
どうしても買いたいものがあって、それは個人的なものだから自分で行きたいの、だから代わってとジェロニモに頼み込んで。
彼は快く代わってくれた。
そうして私はジョーと二人で出かけることになったのだけど。

 

たぶん、ジョーも私のことをなんとなく好きなのだろうとは思っていた。
たぶん――おそらく――きっと。

でもそれが、単に「他に女の子がいないから」選択の余地がなくて仕方なく、なのか
私じゃないとダメだから、なのか
どうにも判断は難しかった。
何故ならジョーは、どちらともわかりかねない態度しかとってはくれなかったから。

優しく見つめたかと思うと、すぐにそっけなくなったり。

冷たくしたかと思うと、繋いだ手の力の加減は好意の現れに違いないと思えるくらいだったり。

キスだってする。

額に、髪に、頬に。

唇にだって。

でもそれは、どれも挨拶の域を出ない。

きっと、相手がジョーではなかったらもっと私は楽な恋が出来ただろう。
もし――他のメンバーだったとしたら。

ジェットは意志表示が明確だし、何しろ女の子には大袈裟なくらい優しい。
ハインリヒはそっけないけれど、だけどきっと大きな愛情でしっかり包んでくれるだろう。
ピュンマなら、ストレートに告白してくれるはず。

私はどうして彼らと恋に落ちなかったのだろう。
こんな――わかりにくくて、挫けそうになってしまうくらいの。
そんな辛い恋をなぜ選んでしまったのだろう。

 

 

車に乗る前は、どこに行こうか何をどの順番で買おうか、うるさいくらいに喋っていた。
なのに、出発した途端にお互い無口になってしまって。
気まずくて、スイッチをいれたFMだけが流れてゆく。

 

――ジョーは私のことをどう思っているのだろう。

 

いつまでたってもわからない。

なんとなく探ったところによると、彼は女の子には慣れている――らしい。
恋人と呼べるようなひともたくさんいたみたいだった。
何しろ、生活が荒れていて、悪いコトもたくさんした――らしい。

 

・・・本当に?

 

いま隣でステアリングを握っている彼の横顔は涼やかで、そんな悪いひとには見えない。
隠れて煙草をすっているのは知っていたけれど、それだって別に悪いコトではないし。
きっとそんなのは、鑑別所にいたという彼の過去から勝手に捏造されただけのものなのだろう。
そうに違いない。
だって、私の知っているジョーは――

 

 

 

 

――きっと、私たちは恋人同士になる。

 

そんな気がする。

 

今だって、かなりそれに近い状態なのだろうとも思う。
でも、今はまだ片思い中。
いつかちゃんと、お互いの気持ちがはっきりするまでは片思い。

きっと――この闘いが終わったら。
そうしたら、たぶん。

ただ、問題は
それまで私が自分の気持ちを言わずにすむかどうかということだ。
あんまり好きで、――大好きで、愛しくて。
自分でもどうしてこんなに彼を好きなのだろうと不思議に思う。
扱いかねるこの思いを胸にしまっておくのは結構辛い。
本当は、言ってしまいたい。
伝えてしまいたい。

 

あなたが好き

 

って。

 

でも、まだ今は言ってはいけない。
――闘いが終わるまでは。

目の前に迫っている闘いが始まったら、私たちはどうなってしまうのかはわからない。
だけど、この気持ちを伝えずに死ぬなんてとてもできないから、頑張ろうと思う。

 

だから、

 

生きているよね?

 

大丈夫よね?

 

私も――あなたも。

 

闘いが終わったら、またこうして一緒にいられるはずだから。
だから、そう信じて――私はあなたへの思いを胸の奥にしまっておこう。

 

 

あなたが好き

 

 

いつかきっと言えるはずだから。