――そういえば、どうしてついて行ったんだろう。
あの頃のジョーは、誰も信用していなかった。
だから、突然一緒に来いと言われても行くつもりなどなかったのだ。
大体、大の大人が揃いの赤い服を来てるっておかしいだろ。
何かの冗談だと思った。が、己も同じ格好をしていると知り驚いたのは言うまでもない。
サイボーグだの何だのと言われたことや、いきなり撃たれたりしたことよりも、怪しい団体の一員らしいことのほうが衝撃的だった。
それに。
昔から団体行動は苦手なんだ。
だから、来いと誘われても行くつもりなどさらさらなかった。
悪の組織だといわれても、ジョーにしてみれば目の前の赤い服の団体も同じようなものだった。
そのくらい信用できなかった。
とはいえ、例え彼等が赤い服を着ておらず普通の格好だったとしても結果は同じだっただろう。
ジョーは他人の誰をも信用せず、また、自身さえも信じていなかった。
では、なぜいまここにいるのだろうか。
「ジョー?どうしたの、急に黙って」
フランソワーズが心配そうに顔を覗きこむ。
「……いや。なんでもないよ」
真摯な蒼い瞳。
思えば、自分はこの瞳しか信じていないのかもしれない。
まっすぐに自分を見つめる蒼い瞳。
決してそらされることはない。
……見ていて欲しくてついて行ったのかもしれないな。
「ジョー?」
「うん?」
「……そんなに見ないで」
「えっ、ダメ?」
「ダメじゃ…ないケド」
額と額をくっつけるようにして瞳を覗き込んで。
うん。
あの時、もしもフランソワーズがブラックゴースト側だったら。
きっと僕は今も彼等のもとにいただろう。
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