「・・・?」

ジョーの胸から身体を起こす。

彼の鼓動が速い。
――熱でもでてきたのかな。

そっと顔を見ると、赤かった。目も少し潤んでいるみたいで。
思わず彼の膝から降りる。

私ったら。

ジョーはケガ人なのに。

抱きしめられて、嬉しくて・・・。
このまま、こうしていられたらいいのにって思ってしまっていた。
ジョーはそんな私をきっと持て余していたのに違いなくて。

 

「・・・ごめんなさい」

 

 

 

 

突然、フランソワーズが僕から離れていった。

僕の腕からすり抜けて。

――僕が、あまりにもきみを離さないから呆れたのかもしれない。
彼女の顔は紅潮していて、蒼い瞳が潤んでいた。

・・・怒ってる?

 

「ごめん」

 

 

 

 

『ごめんなさい』って――何が?

 

 

 

『ごめん』って――何が?

 

 

その時の、僕たちを見ている人がいたらきっと呆れただろう。
だって、僕たちといえば。
きょとんとお互いの顔を見つめているだけだったから。

 

彼女の『ごめんなさい』の意味がわからない。

 

 

私たちはただお互いの顔を見つめていた。
だって

 

彼の『ごめん』の意味がわからない。

 

 

 

 

「ジョー、顔が赤いわ。・・・熱が出てきたのかも」

私はジョーの額に手を当てた。

「そういうフランソワーズも顔が赤いよ。・・・今日の疲れがでたのかな」

心配そうな瞳。

「疲れじゃないわ、これは――」

「僕だって、熱じゃないよ、これは――」

 

 

 

だったら、なに?

 

 

 

そして。

 

 

ジョーははじめて「恋人のキス」を私にくれた。