あの夜。
アルベルトに言われた言葉が胸に沁みる。
『突然、彼女を失うことだってあるんだぞ』
本当に、そうだった。
僕は、無防備にシーラの前に駆け寄ったフランソワーズを見ていなかった。
相手は子供だからと安心していた。何の根拠もなく。
だから、彼女が刺された時はパニックに陥った。
心臓が冷えていく感覚。前にも経験したことがある、痛み。
油断した。
いつもは、彼女を背に庇うのに。
後悔している場合じゃないのに、僕は自分を責めた。
そして――きみに叱られた。
刺されたのは足だから大丈夫、行きなさいと。
気丈だった。
彼女は僕よりも、よほど「戦士」だった。
シーラを撃たなければならなかった時も。
僕を制して出て行ったアルベルト。
そして、シーラを撃つ瞬間。
フランソワーズは目を逸らさなかった。
逸らさず、ちゃんとアルベルトを見つめていた。辛い役をかって出た仲間を。
本当に、きみは強い。
そして、綺麗だった。
帰りのドルフィン号の中で、ジョーはひとり沈んでいた。
理由はきっと、色々。
シーラの村を失った事とか。
ネオブラックゴーストの情報を得られなかった事とか。
アルベルトに辛い役をやらせてしまった事とか。
私にケガをさせてしまった事とか。
少し考えただけで、10個くらい簡単に思い浮かぶ。
優しいあなたの考えている事。
そんなにひとりで背負わなくてもいいのに。
優しいひと。
そして・・・
哀しいひと。
私はあなたが好き。
きっと、愛してる。
でも。
いつか、必ずくる。あなたと別れる日が。
離れる日が。
その日に向かってのカウントダウンは既に始まっている。
――私はその時、生きているのだろうか。
できれば、最期はあなたの腕の中にいたい。
でもそれは、甘美な夢。現実には有り得ない。
だって、あなたはきっと、私をおいて逝く。
だから。
残った私が寂しくないように。
今のうちに、あなたの優しさをたくさんちょうだい。・・・ね?ジョー。