!!御注意下さい!!

こちらは旧ゼロSS「ケンカ」のエイプリルフールバージョンです。
元となるSS「ケンカ」の別の結末です。
お遊びですので、SS「ケンカ」のイメージと全く違います。

以上に御留意の上、進んで下さい。

(初出は2009年4月2日の「拍手ページ」でした)

 

「ケンカ」
エイプリルフール・バージョン

 

 

「何よ、いっつも命令ばっかり!ナインなんか知らないっ、もう来ないで!」

 

僕はむっとしつつ、ここは音を荒げて立ち去るべきなのか、踏みとどまるべきなのか、瞬時に考えた。
いま言い放ったスリーを見ると、自分の言った言葉に驚いたように口元を手で押さえていた。

ううむ。

僕は、彼女がそう言う呼び水となった自分の台詞を思い出していた。

 

「全く、可愛くないな!生意気な女は嫌いだ」

 

嫌い、ってそういう意味じゃなくて、違うんだよスリー。
――と、心の中で言ったところで彼女に聞こえるはずもなく。
かといって、今のは嘘だと言うのもなんともカッコ悪い。

そうして二人睨み合っているうちに、スリーの瞳に涙の粒が盛り上がった。

 

・・・あ。

 

まずい。

 

泣いてしまう。

 

僕は彼女が泣くのに弱い。
もちろん、彼女は泣き落としなんて卑怯な女の武器は使わない。
使わないけれど、その代わりにちょっとのことでは泣いたりしない。
それはもちろん、この僕が、彼女が泣いたりなどしないように細心の注意を払って守っているからで――
――しかし、その僕がこうして泣かせてしまうなど本末転倒だった。

 

しかし。

――嫌いだ、と言っただけで、こんな簡単に泣くだろうか?

 

うーん・・・

 

だってさ。

スリーは、僕が彼女を大好きだってことをちゃんと知ってるんだぜ。
だから、いま僕が「嫌いだ」と言ったところで、すぐにそんなの嘘だとわかるはずだろう?
泣くわけないんだ。

 

「・・・スリー」

とはいえ、目尻に涙の粒を認め、僕はやっぱり落ち着かなくなった。

 

――泣くなよ。スリー。

 

頼むから。

 

泣くな。

 

しかし、無情にも涙の粒はあっけなく頬を伝っていった。
そうして、次の粒が盛り上がり・・・

わわわっ、ちょっと待て。

「ば、バッカだなぁ。全く!嫌いっていうのは反対の意味だっ」

 

スリーはきょとん、とした瞳で小首をかしげて僕を見つめる。

 

「だ、だからっ」

落ち着かない。

 

「き――嫌いなんてものは、その」

僕は勝手に熱くなっていく頬を持て余しながら、彼女から視線を逸らし――

 

「嘘に決まってるだろう!今日はエイプリルフールだからな!」