「見つかった?」
「アニキー?スリー?おーい」 遠くでセブンの声がする。 「スリー、早く」 その瞬間、スリーの足元が崩れた。 *** 突然の大音響。 「――アニキっ?」 セブンは慌ててそのドアを開けた。 「・・・何やってんの?」 *** 目の前には、スリーを胸に抱き締めたナインの姿があった。 「・・・へぇえぇぇ」 ニヤニヤするセブンを見つめ、 「いや、違う、セブンこれはっ・・・」 言い募るナイン。 「アニキ。もうちょっと静かに頼むよ。これじゃあ昼寝の邪魔だよ」 ちらりと腕の中のスリーを見るが、気を失っているのか目を閉じたままぴくりともしない。 「いいっていいって、武士の情けで今のは見なかったことにしとくよ」 そうしてゆっくりとドアが閉じられた。嫌味のように静かに。 *** ナインはため息をつくと、スリーを抱き締めたまま床に座り込んだ。 ――全く。どうするんだよ、これ・・・ 辺りを見回す。 「・・・スリー。・・・フランソワーズ」 呼んでみても、ぴくりともしない。 これ、俺がひとりで片付けるのか? だから、腕の中のフランソワーズがくすりと笑んだことには気付かなかった。
その声は、始めは遠かったが、徐々に近付いてきていることに気付き、ナインは焦った。
「待って、もうちょっと――」
もうもうと立ち込めるほこりが目に入り、そして。
が、言葉を重ねれば重ねるほど言い訳めいて嘘くさく聞こえるのだった。
「いや、だからセブン違うんだって」
「ちがっ、・・・おい、セブン!」
ふたりの周りには、スリーと一緒に落ちてきた本が小さな山をいくつも作っていた。
書架に囲まれたこの部屋はギルモア博士の書斎(というより図書館・・・というより倉庫)。
セブンや博士に内緒で、ある本を探しに来ていたふたり。
本を見つけ、手を伸ばしたスリーが脚立の上でバランスを崩したのが今回の騒動の元だった。
勘弁してくれよ。と天を仰いだ。